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2023-10-06

文明通信2023年10月号

【焙り家】を想う

珈琲文明創業当初、生まれも育ちも横浜に無縁(それでいて横浜大好き人間)だった私には店もまだ全然軌道に乗らないし近所には親戚はもちろん友人知人誰もいませんでした。
そんな時に六角橋界隈のミュージシャン連中が集う宿り木のような呑み屋「焙り家(あぶりや)」の存在を知りました。
もともと独りで呑み屋に入るという習慣がないことに加え、一見さんが入るには相当勇気がいるような店構え(笑)を前に入るのを躊躇ったのを覚えています。
私が勝手にイメージしていた「横浜のミュージシャン」は一様にブルース寄りで髭を蓄えた仙人のような店主が吞みながら営業し、営業の隙間に自ら「横浜ホンキートンクブルース」を歌い出す・・・といった偏見の塊でして(笑)、しかも店名が「焙り家」・・渋い・・。
勇気を出して入店するとそこには仙人でもなく、また肉や魚をひたすら焙り続けているわけでもない、歳にして私より少しだけ上だけど同世代と思しきマスターと若いママさんがごくごく自然に迎え入れてくれました。
当時、珈琲文明はまだ夜10時まで営業し、ケーキも自分で作っていたので毎晩午前様になっていたので「焙り家」がいくら深夜までやっているとはいえ行けるとするなら休前日の火曜(当時の当店の定休日は水曜日だけでした)くらいかなと思っていたら焙り家の定休日が火曜日ということであまり回数は行けていませんでした。
しかしそこに行くと必ず誰かしら、というよりそこにいるほぼ全ての人が音楽をやってい
てそれがもはや共通言語になっていたのが心地よく、そこから多くの「六角橋ミュージシャン」と繋がることが出来ました。
そこに行けば必ず誰かいる、ミュージシャンの宿り木にしてThe Same Old Third Place.
かつて自分が「お店をやろう!」と思った時にまず最初に思いついたのがまさにこんなお店か、或いは音楽(ロック)色を敢えて一切消してチェロが流れる店内で大好きなコーヒーを淹れるお店という相反する二択で結果的に後者のお店にした自分にとって「焙り家」の存在は「もう1つの自分の人生」を疑似体験しているような不思議な感覚もありました。
その「焙り家」が閉店して10年経ちました。
今回何故いきなり「焙り家」の話をしているかといいますとこの度この「焙り家」のRさん(当時のママさん)が亡くなられたのです。
先月24日(日)に「Rさんを偲ぶ会」が行われ、私もお店を休んで出席して参りました。
多くの六角橋ミュージシャンが集まり、その中で横浜在住17年の私は新参者の部類に入りますが我がバンド(コブラツイスト&シャウト)と対バンした人や、その友達の友達やそこからまたさらに繋がって・・・を繰り返し、いつの間にか膨大な数の音楽仲間が出来ていました。そしてその源泉を辿っていくとそこには紛れもなく「焙り家」がありました。
Thank you, R. Thank you, my sweet home ABURIYA.

珈琲文明 店主 赤澤 智

他店お邪魔します
「松原商店街~三代目佐久良屋」

横浜三大商店街(横濱橋、松原、そして六角橋)のうち唯一まだ足を踏み入れたことがなかった松原商店街(天王町)にこの度初めて行って参りました。他の2つの商店街と異なるのは「アーケードが無くて歩行者天国になっている」という点でして、六角橋商店街も歩行者天国にするのも有りだよなぁとか思ってしまいました(諸事情もちろんあるんでしょうけど)。さて、その松原商店街を少し越えたところに「三代目佐久良屋」というお蕎麦屋さんがあります。
戦後ほどなくして創業された老舗の名店ですが、現在の三代目店主の白井さんは既に大ベテランでありながら私の「カフェ開業講座」を受けに来てくださったりして、他業態の知識や情報に関しても探求熱心な方であり、代々続く屋号に全くあぐらをかいていないところが私は大好きでして、この度初訪問した「三代目佐久良屋」は確かに老舗でありながらも(良い意味で)ポップな要素も散りばめられていて若い人たちからも支持されているであろうことが伝わってきました。
以前この佐久良屋でアルバイトしているという女性が当店に来てくれたことがありました。
「白井さんから薦められて来ました」と堂々と素性を明かしてくれたことも嬉しかったですし、会話の端々に佐久良屋や白井さんに対する感謝の気持ちもほとばしっていて本当に良い店なんだなと思っていました。
今回私は家族を率いていた為あまり時間も無く「天せいろ」だけ食べましたが、揚げたて天ぷらも、そしてなんといってもそこで製麺している蕎麦も絶品でした。
今度はぜひ私の夢である「蕎麦屋でまず板わさか何かをつまみつつ日本酒でしっぽり呑(ヤ)り、せいろ(しかも2枚)で〆る」というのを絶対やってみたいと思うしまたそれが出来る店でもあります。相鉄線へのアクセスも良くなった今、天王町及び松原商店街そして絶品蕎麦を食べにぜひ行ってみてください!

「三代目佐久良屋」 いつもあなたのお蕎麦に

★ぴあMOOK【横濱の喫茶店】に載りました!

https://book.pia.co.jp/book/b635023.html
かつてない大きさで人物像がドーンと見開きで出ててビックリしました(笑)が色んなカフェや喫茶店が目白押しで読んでいて飽きません。

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