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2023-09-06

文明通信2023年9月号

「生涯現役を全うした商店街店主の方々を想う」

当店はサイフォン式ではありますが、アイスコーヒーやコーヒーゼリーを大量に作る際には10~12名用のペーパーフィルターを使います。
「地産地消」といいますか六角橋商店街で揃うものであれば多少割高であろうと商店街にあるお店で買いたいと思っているのでこの10人用ペーパーフィルターは同じ仲見世にあった山本園茶舗というお茶屋さんから購入していました。
仲見世を歩いていたある朝この山本園茶舗の店主山本さんに呼び止められました。
「間もなく店を畳むことにしたんでこれ買っていかない?」と勧められたのが4~6人用のペーパーフィルターでした。ペーパーフィルターで当店が要るとすれば1~2人用か或いは10人以上用のものなので絶妙に不要(笑)なものではありましたが、ここで断るのも野暮だと思い購入しました。
口数が多い方ではなかったので普段あまり会話をしてこなかったのですが店を閉める最後に色々なお話が聴けました。なんといっても70年ずっとあり続けたお店です。商店街の歴史の先生とも言え興味深い話が次々に出てきました。戦後はここ六角橋だけでも8つのお茶屋さんがあったとのことで、時代の変遷はもちろんわかりますが、昔の人は本当によくお茶を飲み、おにぎりを食べていたんだなぁと思いました(お茶屋さんでは海苔も売っています)。私は山本園茶舗の外観とそして山本さんとのツーショット写真を記念に撮りました。
山本園茶舗が閉店して間もなく山本さんが亡くなられていたことをつい最近知ることになりました。
また、私がコーヒーミルの掃除に使う「ハケ」を購入していた矢澤商店の矢澤さんはご親戚も連れて珈琲文明にいらしてくれたこともあったり、私が商店街役員になったときに「あなたはどこの出身の人なの?すごい興味があったんだよね」と生まれも育ちも横浜とは無関係な私が纏う「浜っ子に無縁な空気感」をきっと瞬時に感じ取っていらしたのだと思います。
そんな矢澤さんがこの度亡くなられました。
91歳には絶対に見えない快活な人でした。
毎朝私は矢澤商店の前を通ってから来るので亡くなられる直前まで矢澤商店を開けていたことも知っています。
思えばかつて珈琲文明のすぐ向かいにあった魚屋(魚利さん)さんのご主人も前日まで普通に働いていました。
まさに生涯現役のまま亡くなられたというスタンスは商売人として天晴れとしか言いようがありません。
私もいつまで珈琲文明をやり続けられるのかわかりませんが、定年もない世界、こうした誇るべき先達を見本とし、鑑とし、生涯現役を目指していこうと思いました。

珈琲文明 店主 赤澤 智

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