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2023-08-06

文明通信2023年8月号

「撃沈!リキッドアイスコーヒー」

現在当店で唯一の持ち帰り可能商品「ドリップバッグ」のヒットに気をよくして、次なるテイクアウト商品の筆頭候補が「リキッドアイスコーヒー」でした。
ほとんどのコーヒーチェーン店はじめ多くのコーヒー専門店がこの季節になると(また通年で)販売していますが、既に出来上がっているアイスコーヒーが紙パックなりボトルなりに入って冷やすだけで飲めますしこれ以上ないほどに手軽なもの故、新商品販売には非常に腰が重い私としても夏の物販の主役としてずっと頭にはありました。
そしてかつて無数の市販されている「ドリップバッグ」を次から次へと賞味してみたように去年から一年かなりの量の「リキッドアイスコーヒー」を飲みお腹はタプタプであります。
しかし、結果としてこれぞ!と思えるもの、または現物はこちらで抽出したとしてそれをパッケージ化する製造ルートも含めでこちらの思惑は全て外れてしまいました。
生産コストというよりもやはり味が理由でした。
アイスコーヒーを現物化、即ち「豆を挽いて、抽出し、液体化」した状態のものの劣化スピードは本当に早く、仮に未開封であったとしても相当に「足が早い」ことを飲んでみて痛感しました。
ましてや開封後の風味劣化は凄まじく、悪い意味での酸味(果実臭ではなく酸化臭)が入ってしまっており、これはチェーン店、市販品はもちろん、私が尊敬してやまない名店の商品ですらそうでしたので、こればっかりは大元でどんなに美味しいものを抽出しても賞味期限に関わらず開封後は風味が大失速するというものだというのを思い知らされました。
ちなみに私がここ一年で飲みまくったリキッドアイスコーヒーの中で「これは美味しい!」と忖度抜きで思ったのは反町にある「NAGI(凪)COFFEE」さんのアイスコーヒーリキッドでしたが、これは本当に美味しくてその日のうちに飲み切ってしまったので日が空いてからの味は試せず終わりました。
そんなわけで「一回で飲み切り」のものであればもしかしたら良いモノが出せそうかもしれないと思いましたが、「ある程度日持ちがして開封後も風味の劣化が遅いリキッドアイスコーヒーは現時点ではこの世の中に無い(笑)」という結論に至りました。
なので残念ながら「珈琲文明オリジナルリキッドアイスコーヒー」は幻と終わったことをご報告します。
しかし、ひとつだけ光明が射しまして、それは「カフェオレベース(濃縮されたコーヒー原液が入っていてミルクで3~4倍にして飲むもの)」というものであります。これはいくつか「美味しい!」と思えるものも既にあり、かつ「ある程度日持ちがして開封後も風味の劣化が遅い」というものでもありますのでこれからまた一年かけていろいろと飲み比べ、試行錯誤してみたいと思いますので気長にお待ちいただけたらと思います(※商品化は未定です)。
赤澤珈琲研究所 代表 赤澤 智

文明文庫「駅伝ランナー(佐藤いつ子著)」

お子様の夏休みの読書感想文の本としても、また大人の皆さんにも大変お勧めの一冊をご紹介します。この「駅伝ランナー」の著者佐藤いつ子氏、実は私の中学(兵庫県西宮市)の同級生でして、現在は関東に住むこの中学出身連中で集まる関東支部の参謀(?)を私と共に務めてくれたりもしています。この「駅伝ランナー」は重版ヒットしただけでなくなんと高校入試の試験問題にもなっており、教育的にも非常に評判が良い小説です。
で、私はそういった(教育的に良い)話なんだという予備知識だけ持ち読み始めました。
優れた小説(歌詞にしてもそう)は風景や情景がクッキリと脳内に浮かぶものであるという自論を持つ者としてこの話は疑いなく優れた小説だったし、このままいわゆる「教科書的なイイ話」を読んで童心に帰るのも悪くないなぁと思いながら読み進めました。
そんな中、「小鳥の憧憬」という章に入って、しばし読み進めると「おおおおぉぉぉ!」ってなりました(語彙力・・・)。
私のように何も知らされずに「おおおおぉぉぉ!」ってなりたい人はここから先は読まずにとにかく角川文庫から出ているこの「駅伝ランナー」を今すぐ購入し読破してください。
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さて、以下は多少ネタバレも含みます。どう「おおおおぉぉぉ!」なのかといいますと、突然主人公が変わったんです。「同時世別角度視点描写(て、こんなフレーズじゃなくきっともっとちゃんとした呼び名があるとは思うけど)」が起こってるんです。
女流作家の中で私が好きな山田詠美さんや湊かなえさん、辻村深月さんなんかもこの手法を使った名作がありますが、この「『駅伝ランナー』からの『小鳥の憧憬』」もそれがあまりにも見事で唸りました。
さらに中盤からこれまた強烈なキャラが登場します。少年漫画に必須な、人気投票すると主役を喰うほどのキャラ(スラムダンクでいえば流川、魁男塾でいえば伊達)が登場して全く飽きない。
とにかくこの「駅伝ランナー」には主人公が3人いると言っても過言ではないんです。
この話は実写にも合うような気がしてて、その際にこの「一心(←流川や伊達ポジションの人物)」にはイケメン俳優起用して大ヒット!とか勝手に妄想は膨らみ映画化を熱望します。
一心が陥ったトラブルのくだりでもっとダーク&ダーティ&陰湿な展開もあり得たかもしれないけどそこはさすが「教科書的」なのでお子様にも安心してお勧めできます。
過不足ない、いや清々しいほどにポジティブ&アッパーな余韻を残してのラストを読み終えた爽快感はこの夏あなたも間違いなく爽快な気分にさせてくれるでしょう。

「駅伝ランナー(佐藤いつ子著)①~③」角川文庫ぜひご一読ください。
※珈琲文明店内にて閲覧も可能であります。

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