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2022-10-06

文明通信2022年10月号

「事故やリスク回避のために飲食店が出来ること」

先日「幼稚園バス置き去り事件」がありました。
本当に痛ましい事件で、何故たった6人の園児の点呼確認が出来なかったのだろう……と悲しく残念でなりませんが、詰まるところこれは「規則がルーティンにまで浸透していない」ということに尽きるのではないかと思っています。
「駅員さんの【指差し確認】」などがまさにそれに当たると思うのですが、それはもはや条件反射や身体反応というものであり、今回のバス運転手もわずか5、6歩、時間にして3秒くらいの確認が、ルーティンとしてその体を動かすだけで大惨事にならずに済んだはずなのです。では当店のようなカフェにおける「重大で深刻な事態、事故に繋がる物事」とはどんなものがあるかをまず考え、またそれへの防止策を考えていきたいと思います。
サイフォン器具のリスクを述べます。フラスコを火にかける際、フラスコ表面が濡れていると割れる恐れがあります。
それを防ぐためには当たり前の話ですが火にかける前にフラスコが濡れていないか確認することです。しかしこの「その都度確認」という行為は見落としや怠りが生じるものです。
すべきことは「フラスコが濡れていようがいまいが拭くという所作をルーティンにする」これに尽きます。
次にそのサイフォン(フラスコ)をお客様に提供する際あるいは提供後に起こり得る重大事故の可能性としましてはフラスコとスタンドが外れる事態であります。
スタンド上部にあるネジ(?)のような部分がしっかり締まっていれば外れることはまずないのですがこれがいつまでも締まったままであると過信するのは禁物でありまして、経年で緩くなってくるだけではなく、お客様が(悪意あるなしに関わらず)動かしてしまった後にきっちりと締め直さなかったということもあるかもしれません。
フラスコとスタンドが外れて落ちた場合火傷や器物損失(フラスコの破損の問題などではなくお客様のスマホが壊れた、資料がズブ濡れになった等等)に繋がります。
これらの防止策も先ほどと同様でして、フラスコがスタンドにしっかり固定されているかとその都度確認するのではなく「締まっていようがいまいが締める」のです。
つまり所作として定着させそれをルーティン動作にしてそれを何万回も繰り返すのです。
そうすることでそのルーティン動作がない場合、自分自身がなんだか気持ち悪くなるくらいになればようやく「型が出来た」と言えるのでしょう。
思えば「お茶」の世界の所作もそれこそおびただしい数のルーティンの中で成立しています。
それを思えばコーヒーの所作なんてしれたものです。
リスクの話を続けます。珈琲文明の玄関の扉は入って来る人が引いて、退店する人が押して出て行くタイプであります。その扉を開けると車は来ないまでも狭い仲見世の道ということもあり歩行者がかなり行き交います。ここで気を付けなければならないのは「歩行者は店の扉が突然開くことなど考えていない」ということです。また同時に退店されるお客様も何も考えずに扉を押して開いてしまうかもしれません。
珈琲文明は扉の横にあるガス灯(もどき)の袖看板の下に看板(現在は拙著のポスター看板)を置いているのですがこの看板が実はポイントでして、ここに看板を置くことでこのゾーンに人は入って来ないという狙いがあります。
また当店のサイフォンガステーブルはほんのわずかではありますが厨房(淹れている私側)のほうに傾いています。ほんの数ミリの話ではありますが、仮に地震が来て大きな揺れが起こった場合に倒れるのはカウンターにいるお客様側ではないということがポイントであります。
このように「危険な状態になる物事、場所を探す」そして「その策を講じる」で終わってはダメで、「それを避けるための所作をルーティン化、習慣化させる」というところまでやらなければならないと日々思っております。

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