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2020-03-05

文明通信2020年3月号

文明通信2020年3月号表
文明通信2020年3月号裏

「サイレントロイヤルカスタマー」

「サイレントマジョリティ」という言葉があります。和訳すると「物言わぬ多数派」とでもいいましょうか。アイドルグループ「欅坂46(一連の『坂グループ』(?)の中では個人的には一番好きです)」に同名のヒット曲もありました。
今回の表題は「サイレントロイヤルカスタマー」です。私が勝手に作った言葉です。
この話をする前にまずカフェ開業講座等でよく訊かれる「常連のお客さんと新規のお客さんはどちらが大事?」という質問への回答から始めます。私の考えは、一言で言うならば「どっちも大事」になります。つまらない回答ですみません・・・ただし、これとは似て非なる、別の発想で私の中で最重要視している考えがあります。それは、
「接客運営の際には『物言わぬ、至って静かなごく一般的なお客さま』に軸足を置く」」
ということです。そしてこのようなお客様のことを私は「サイレントロイヤルカスタマー」と呼んでいます(「常連or新規」は関係なく)。
常連さん、新規さん、知人友人、様々な種類の人が来店されますが、
それらのお客さんの種類への「優劣」ではなく、運営の基軸は常にこの「サイレントロイヤルカスタマー」を中心に据えて行われるべきであるということです。
いくつか具体例を述べますね。
【例その1】来店された順番がお客様Aが先でお客様Bが後だったとします。まだお水を運びに行く前にBのお客様が声を出して「すみませーん、文明ブレンド二つで~!」と言ってきた場合・・・まずお客様Aに水を出しオーダーを取り、その後お客様Bのところに行き「文明ブレンド二つご注文は承りましたが順番にお作りしてお出ししますね」と言います。まぁこれは単に順番どおり伺いお出しするというだけの話ともいえるのですが、
「物言う人(これも別に悪い意味ではありません)」を取り立てて優先しないということであります。
【例その2】常連さんあるいは私の友人知人が来店し、カウンターに座り、カウンターのすぐ隣(1席空けてではなくまさにすぐ隣)には一人読書をするお客さんがいる場合・・・いつもなら私も結構会話したりする場合の相手であってもかなりトーンダウンもしくは会話をするのをやめます。
店によっては(呑み屋のカウンターなんかはとりわけそうでしょうが)隣にいるお客さんにも話題を振ったりして敢えて巻き込んでこれを機に知り合いになってもらっちゃおうという方向性の店もあると思います。それは店それぞれの個性でありコンセプトであり構わないと思いますが、当店の場合はこの「常連さん、友人知人、」と「一人で読書する人」のどちらが大事とかではなく、「一人で読書する人のほうに接客運営を合わせる」ということにしています。
この他にも無数に具体例は挙げられるのですが、とにかく私が常に強烈に意識していることが「物言わぬ至ってごく普通の最高に尊いお客様(サイレントロイヤルカスタマー)に不利益になるような接客やサービスはおこなわない」ということになります。
当店には疑う余地もなく大常連さんでありながら未だ名前も知らず、未だご注文時以外に一切の会話も交わしたことがない「やむごとない人々」が本当にたくさんいます。
当店はこのサイレントロイヤルカスタマーという太い柱が物言わず静かにそっと、でもとても力強く支えてくれていることを常日頃から私はひしひしと感じて営業しております。
いかんせん普段は会話すらしたことがないサイレントロイヤルカスタマーの人々でありますので、この場を借りて今こそ限りない賛辞と謝意を込めて、いつも本当にありがとうございます!

珈琲文明 店主 赤澤 智

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