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2019-10-05

文明通信2019年10月号

文明通信2019年10月号表
文明通信2019年10月号裏

「長居(ながい)とはどれくらいの時間のことをいうのか」

「長居(ながい)」という言葉はとても曖昧なもので人によってそれが一時間かもしれませんし二時間かもしれません。またお店の業態(普通の蕎麦屋と立ち食い蕎麦屋が違うように)によってもそれは変わるはずです。お店側からこの話題について触れるのはかなり勇気がいることなのですが、他のお店はともかくここ珈琲文明では「長居(ご遠慮いただくレベル)=3時間」という時間をひとつの指針としています。ただこのことはこれまで店内に貼り紙してあるわけでもメニューブックに書いているわけでもありませんでしたのでお客様側からしてみると知る由もありません。先月、グーグルのクチコミに以下のような当店への投稿がございました。良いクチコミばかりではなく辛辣な意見や来店報告もなされる場です。今回は星一つ、つまり当店に「最低ジャッジ」がくだされた投稿と私からの返信全文を敢えて載せ、さらに今後の話を続けたいと思いますので、少し長くなりますがご覧ください。
【クチコミ】★☆☆☆☆
1 か月前 – 平日の昼にコーヒーとカレーパンを利用。電源が使えるので携帯の充電もできてPCも使えてゆっくりできるのでコーヒーの待ち時間も気にならない。混んできたら帰るつもりだったが、空席が埋まる様子もないのでつい長居をしてしまった。この時点では星5の店であった。しかし気分良く会計を済ませて店を出ようとしたところ店員(店主?)に、次からはあまり長居をしないで下さいと言われ、気分は最悪に。 常に空席があり満席による機会損失はなかったのだが…店の雰囲気が良くても、余計な一言で客の気分を害する最悪な店。もう二度と来ないと思いつつ店を後にした。ゆっくりできるのはコーヒーができるまで。飲食が済んだら速やかに退店しないと店員に怒られるので、長居したい時は他の店を探したほうが良さそうです。
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【返信】
珈琲文明店主の赤澤です。とても重要なことが書かれておりましたので、ご説明と今後の改善策含め、初めてここに返信書き込みさせていただきます。 まず、何はさておきまして、この度のking curry様のご利用におかれましては、「king curry様には何の非もない」ということをまず強調しておきます。 それをまず最初に申し上げたうえで、当店での取り決め事を説明させていただきます。 当店では「お一人のお客様がテーブル席で3時間以上(※なぜ3時間なのかの説明は後述します)のご利用となった場合は【次回からの話になりますがあまりにも長い時間のご利用はご遠慮ください(※この文言は定型文言として述べることにしておりますのでこの度もそっくりこのままだったと思います)】と帰りがけにお伝えするようにしておりまして、オーダーを受けた時間が伝票に記しておりますので、3時間を経過したことでそれをking curry様に申し上げたことになります。 ただこの当店の「勝手な」取り決めはメニューにも店内の掲示にもどこにも書かれておらず、そもそも「長居」という概念も人それぞれまちまちであるということもあり、その「3時間を経過したお客様」に対し、こちらとしましてはあくまでも「今回は含まず、次回からの話」という部分は特に大事なポイントでして、つまり今回のking curry様のご利用に関しましてはking curry様には一切の非がないということを繰り返しておきます。 これまでking curry様以外にもお客様に同様の文言を帰りがけにお伝えしたことが数件あります。 この12年間の営業で10人前後、概算では1万5千人に一人くらいの割合で、この定型文言を言ってきたことになり、またこれからもこの当店のスタンスは変わりません。 「その日その時の来店を含まず次回以降の話なのであれば会計時最後の最後に何もわざわざそんな【余計な一言】言う必要もないのに」とも確かに思ったこともあり、かつ当然言う側としましても大変申し上げにくく、そのうえ多大なエネルギーを要する言葉でもありますゆえ、葛藤し、悩んだこともありました。 さて、ここでなぜ「お一人のお客様がテーブル席で3時間以上~云々」の考えになったかをご説明します(すみません、少し長くなります。)。 少し生々しい話ですが当店の「営業的な内情」を述べますと、 一か月あたりの平均で1回転(座席数と同数の客数)だった場合、当店は赤字となります。とても乱暴な例え話をしますと、「オープンと同時にすぐ全席が埋まり、満席となり、そのまま閉店までお客さんが帰らない(=1回転)日が続くとお店は潰れる」ということになります。単価の高い飲み屋やレストラン、そして20坪以上のハコの場合、1回転でも黒字化は可能ですが、喫茶店のような業種の場合(その中では単価が高めな当店でさえも)、1回転営業が続くとそのお店の経営は必ず行き詰ります。 この事実をベースとし、1回転以上するためには当店の場合、カウンターを除いたテーブル席が6席あり、席数は19席ありますが、 8時間の営業時間のうちに全テーブルが1回転するためには仮に6人がけボックスシートでお一人の場合1.3時間、3人がけに一人であれば2.6時間で入れ替わる必要があります。この理屈で言えばカウンター席に関しましては開店から閉店までいて1回転ということになります。 そこで、カウンター席のお客様は除き、テーブル席のお客様はお一人につき3時間、二人の場合6時間を超えた場合は「次回からの話になりますがあまりにも長い時間のご利用はご遠慮ください」と言うことをこれからも継続的にお店を経営しそれにより家族を守り生活していかなければならないということから断腸の思いで取り決めました。  以上が当店でのこの取り決めの経緯と考えなのですが、先に述べたようにこれらの取り決めはどこにも書いても掲げてもいません。ですから「今回ではなく次回から」としているのですが、この度自分が実際にお客様の立場になった場合を改めて考えてみました。 すると「いくら次回からと言ってもそんなこと言われたら今回も否定されたようで、こっちは3時間はそこまでの長居とは思っていなかったし、だったらあらかじめどこかに書いておいてほしいもんだよ」という気持ちが沸くのも大いに頷けます。 様々な取り決めを目に留まるように全て記しておくのも世知辛いなぁという気持ちが正直あり、これまでは二の足を踏んでまいりましたが、やはり「長居」という概念があまりに人それぞれ曖昧すぎるため、「長居(=当店の場合お一人3時間)」というこちらからのメッセージは事前に記しておくべきだという考えにこの度を機に至りました。 来月のメニュー改訂のタイミングでこの文言を明示しようと思います。 最後になりなりますが、この度のking curry様のご利用に関しましてはking curry様側には一切の非はないということを何度も繰り返して筆をおきます。 機会損失に対しご配慮されていたことも恐縮です。 この度のご利用ありがとうございました。 
珈琲文明 店主 赤澤 智
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このようなわけで、税改訂もあった今月より新しくなったメニューブックの最初の見開きにあらかじめ「長居」の件は明記することとなりました。
ところで、この12年の間に10人前後のお客様にこのような「次回からはご遠慮ください」という旨を伝えてきたわけですがその中でお一人、その後も(しっかり時間は守ったうえで)何度もいらしていただけているお客様がいまして、私はその人が大大大好きであることを直接申し上げたことがありませんがここでだけ述べておこうと思います。

珈琲文明 店主 赤澤 智

~「失敗しないガトーショコラ」マスター講座のお知らせ~

今月16日(水)に「カフェラボ(カフェ開業を目指す方々のオンラインコミュニティ)」のイベント、題して「失敗しないガトーショコラの作り方」を開催します。
珈琲文明でも「クラシックガトーショコラ」という商品を現在自家製にて提供しておりますが、当店でのガトーショコラは究極にシンプルな素材「カカオ(※なんとチョコレートすら不使用)、卵、バター、牛乳、小麦粉」しか本当に使っておらず、
エレキギター(自分なりに最もしっくりくる例えがこれになるもので)に例えますと、
「ギターをアンプに直結させてそのまま音を出す」というような表現方法になります。
プロのギタリスト及び商品流通経路に乗る前提でのギターの場合、ギターとアンプの間にいくつものエフェクター(音の粒を揃えたり、敢えて歪ませたり、揺らぎを与えたり、残響音を出したり)という効果装置を通すことが一般的です。
今回のこの「ガトーショコラ講座」はこっちの一般的に言うところのプロ仕様のほうのレシピをお伝えする講座となります。
ただし、ギターとアンプの間に数多くエフェクターをかければ良いというものでもなく、
エフェクターはつなげばつなぐほどギター本体の音の芯は細くなり、またこの理由から当店でのクラシックガトーショコラは「究極の引き算」の結果、アンプ直結型にしておりますが、これはあくまでもコーヒーに軸足を置いたままそこに添える「お茶菓子」というようなスタンスをとっているからこそのものなので、もっと一般的な(コーヒー専門店ではない)カフェではやはり本当に効果的なエフェクターがかかっているものが相応しく、
しかもその中でも最高最適なエフェクターはこれで、ボリュームのつまみはこれくらいで、そもそもギター本体はこれがよくて、アンプはこれで・・・と言った各種最高のアイテムをスイーツ専門家から教えてもらうという贅沢な講座なので誰より私自身がまずとても楽しみです。
「カフェ(またはケーキ屋)開業を考えている方々」にはこれからお店で出すビジネス商品としての一品作りということから「原価」や「安定供給のコツ」などにも触れていくのでもちろんうってつけではありますが、一般の方の参加も大歓迎です。
またこの日はあくまでも副次的な要素ではありますが、「ハンドドリップでおいしいコーヒーを淹れるコツ」も同時に実演講義(これに関しては私赤澤が)します。
それでは以下カフェラボHPからの詳細案内記事を貼り付けます。
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コーヒーに合うおいしいスイーツを提供したいというのはカフェ経営者なら誰でも考えるもの。でも、お菓子作りの技術は持っていない、作ってはみるけどこれでいいのか不安になりませんか。正しい製菓理論と技術をお伝えするお菓子作り講座を開催します。しかも作り方を教えるだけじゃなく、原価大公開からのカフェでケーキを作り提供することについてのぶっちゃけ本音トークセッション付き。カフェラボならではの企画です。オンライン参加も可能です。
「失敗しないガトーショコラ」
割れるのはなぜか 凹まないのはなぜか 安定して同じものを作るには
カフェではマストと言われるほど人気のケーキ、だけど結構難しいんです。お菓子作りというとふんわり優しいイメージがありますが、店で提供するためには科学に基づいた理論を知り、安定した商品を提供しましょう。

【イベント】「失敗しないガトーショコラ」マスター講座&原価計算の本音トーク
■日時 2019年10月16日(水)13時-15時
■講座内容
1)ガトーショコラデモンストレーション講座
2)トークセッション「原価計算の本音トーク」赤澤智、松本美佐
・ガトーショコラと珈琲文明のコーヒー 付(オンライン参加の方にはつきません)
・受講者は今回のガトーショコラのレシピをカフェメニューとして提供することができます。
■対象
カフェ経営者、カフェ開業予定者、興味のある方ならどなたでも。■会場 ミサリングファクトリー 横浜市港南区丸山台2-38-2 濱ビル2F 
 横浜市営地下鉄ブルーライン「上永谷」駅徒歩8分
 アクセス>ミサリングファクトリーホームページ■講師
松本美佐 お菓子教室ミサリングファクトリー 
代官山「イル・プルー・シュル・ラ・セーヌ」のメソッドでお菓子作りを教えている。今回の講座ではイル・プルー・シュル・ラ・セーヌのレシピをベースに、原価率を考えたオリジナルレシピを公開。
赤澤智 珈琲文明
東横線白楽駅から徒歩4分のところにあるスペシャルティコーヒー専門店「珈琲文明」店主として更なる珈琲研究の毎日を送っている。店では自家製ケーキも提供中。
■受講費 
一般 6,000円 オンライン参加(5,000円)
カフェラボ研究員 5,000円(オンライン参加4,000円)
*マスター講座初回特別価格です。一般参加の方が受講日までに研究員になると1,000円キャッシュバック■定員 6名(+オンライン5名)
■申込方法 カフェラボサイトの専用フォームよりお申し込みください。
https://www.cafelabo.net/
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以上、くれぐれも会場(及び申込み受付も)は珈琲文明ではありませんのでご注意ください。

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