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2019-11-05

文明通信2019年11月号

文明通信2019年11月号表
文明通信2019年11月号裏

「【コーヒーにミルクはお付けしますか?】にくれぐれも遠慮は無用ですからね~」

先月から突然「コーヒーにミルクはお付けしますか?」と尋ねるようになったことに薄々気づいてる方もいらっしゃるかと思います。今までそんなこと訊かれなかったのに突然マスターがそんなこと言うもんだから「え?いつも入れないですけどこのコーヒーは入れたほうが美味しいんですか?」と言われたりもします(笑)。
さて、コーヒーに関するとある統計結果があります。その中で「コーヒーにはミルクを入れずにブラックで飲む」という人が6割以上という結果が出ていました。
内訳の年齢別の結果では「年配の人のほうが若い人よりもブラックの確立が高い」ということでしたが、個人的にはこの結果には懐疑的で、日々カフェの現場にいながらにして感じるのは若い方のほうがブラックで飲む人が多い印象を受けています。
ともあれインスタントや缶コーヒーやファストフード店でのコーヒーも全てひっくるめても半分以上の人がブラックで飲んでいるということは、カフェ、とりわけ当店のような「珈琲専門店」でのミルク不使用率の高さは推して知るべしといいますか、なにより日々の現場目線でお客様が帰られた後に未使用のままミルクが残っている様をこれまでに何度も目にしてきました。これが植物性のポーションミルク(ミルクとは言えないいわゆる「コーヒーフレッシュ」)であれば使い回しているお店も多々あります。しかし当店のミルクは動物性、(つまり濃い牛乳※乳脂肪20%)ですので衛生管理上、未使用であれど放置され時間が経過したものは廃棄せざるをえません。
北海道では酪農家が激減しており乳製品全般の生産が近年増々困難を極めている昨今、
「使われることなく廃棄」という道筋だけは断とうという結論に至りました。
そこでこの度、ご注文伺う際に毎回その都度「コーヒーにミルクはお付けしますか?」というこれまでなかったやり取りが発生するというお手間をお客様にはおかけすることになりました。
ここでひとつ声を大にして申し上げたいことがあります。それはこの問いかけに対してけっして遠慮はしないでほしいということです。繰り返しになりますがあくまでも「使われることなく廃棄されること」だけをやめたいという考えであり、ミルクを入れたほうがコーヒーは美味しいと思われるお客様はどうか存分に入れてほしいと思います。
かく言う私は実は30歳過ぎるまでコーヒーにミルクを入れて飲んでいました。
さらにこれは私がどこか他所のカフェに入った場合の自分なりの飲み方というのがありそれが少しユニークなので紹介します。
ちょっと上から目線でエラそうなのですが、私はだいたい喫茶店や珈琲専門店に入って運ばれてくるまでの間にそこのコーヒーが美味しいかどうかはわかります。かなりの高確率で当たります(あくまでも個人の感想です)。中には入った瞬間に、または入る前から「ここはあまり期待出来ないかもしれない(くれぐれも個人の感想ですよ)」というコーヒーもあります。それでいてそういうお店で敢えてコーヒーを頼むことも多いのです。
何故か?それは、その昔、古き良き喫茶店で飲んだ「豆が既に少し酸化」した今となっては「不味い」と評されるコーヒーにノスタルジーを感じるからです。青春の思い出というやつです。そういうコーヒーに入れるミルクはもちろん植物性ポーションミルクでないとしっくりきません(笑)。
今やイタリアンパスタ専門店で日々パスタを作ってる人が、たまに純喫茶にいってナポリタンを食べたいと思う時そこに期待するのはやはり「ケチャップ(天然のトマトなんてもってのほか)」の味が強く出て、「ベチャベチャしたもの(アルデンテなんてもってのほか)」だったりします(しないか?・笑)。いや、味や質はともかく、かつての味の中にある「思い出という最高のご馳走」を求めることがあるのです。
ですから私はもし「ここのお店のコーヒーは期待が出来ない」となり次第、この「あの日の青春のコーヒーごっこ」に切り替え、ポーションミルクはもとよりしっかり砂糖も入れます。
こんなこと書いておいて、当店にいらしたお客さんが同じ考えでうちのコーヒーを飲まれるとこれまたショックではあるのですが・・・(苦笑)。
何が言いたいかといいますと、「いつもミルクを入れて飲んでいる人」にせよ「あの日の青春のコーヒーごっこに切り替える人」にせよ、とにかく遠慮なくミルク(ポーションミルクの用意はございませんが)をご要望ください、ということです。
本当に遠慮は無用ですからね。

赤澤珈琲研究所 代表 赤澤 智

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