文明通信2021年8月号
「コーヒー豆の保存方法について」
およそ15年前に私が書いた「世界一わかりやすい珈琲の本」という小冊子があります。
とっくに売り切れて廃版になっていたのですが、この秋に再販する運びとなりました。
ただこの15年の間にコーヒーの世界もいろいろと様変わりしたことや、一般の人が求める情報のニーズも変化してきたこともあり、これを機に「修正及び加筆」をした上での再販となります。加筆については私がかつて行なった「コーヒー講座」の動画版(現在カフェラボ会員のみへの限定公開)で特にヒット数が多かった「コーヒー豆の保存方法」と「ペーパードリップの美味しい淹れ方」を追加掲載してみようと思っています。
今月の文明通信では一足早くこの加筆した「コーヒー豆の保存方法について」の章を以下に掲載しておきますのでよかったらお役立てください。それでは参りましょう。
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【珈琲豆の保存方法について】
「コーヒーは冷凍保存に限る!」みんなも聞いたことあるかもしれないけどこれ本当かな?正確には「豆の酸化の進行を遅らせるためには冷凍保存がベスト」ってことね。
逆に酸化の進行が早まる順番としては「冷凍→冷蔵→常温」になる。
「ほらやっぱり冷凍がいいんじゃん!」って言われる前にもうひとつ大事な話させてね。
焙煎直後の豆にはまだ大量の二酸化炭素が含まれていて、これをある程度飛ばしてあげないと味もボンヤリしたものになるんだ(※ドリップの時の「ムラし」はこのためにある)。
料理の世界での「味を落ち着かせる」や「熟成」という工程がわかりやすいと思う。
「冷凍」するとこの「熟成」も止まってしまうんだ。
つまり「味がボンヤリした状態のまま保存される」ことになるんだ。嫌だよねそれ。
だからまず「焙煎後どれくらい経った状態の豆が自分にとって最も美味しいのか」を探り、
その美味しいタイミングを待って「冷凍保存」すればよくて、それまでは「常温」がオススメ。私なら個人的に焙煎後48時間~1週間は熟成させたいと思ってるし、人によっては「2週間くらい経って豆の表面に油が浮いてきたくらいが美味しい」という人もいるし、こればっかりは好みに任せるしかないけどね。
さて、今焙煎後にベストな味になるまでが「常温」、ベストになったならば「冷凍」として、「【冷蔵】はどうした?」って思ったかもしれないけど、「冷蔵」ってつまり「冷蔵庫」に入れるっていうことだよね?この場合一点注意しなければならないことがあるんだ。
「冷蔵庫」の中に他に色々な食材や生鮮食料品が混在している場合(一般の家庭用冷蔵庫ってそういうもんだよね)、よっぽどしっかりと密封した状態で保存しないと庫内の様々なニオイを豆が吸着してしまうんだ。
よく「暮らしの知恵」的に「コーヒー豆には脱臭効果があるから冷蔵庫や下駄箱にコーヒー粉を置いておくと良い」と言われる話は逆に言えば「コーヒーには他の香りやニオイを吸着する働きがある」ってことなんだ。
だから「冷蔵保存」の場合、冷蔵庫内は他に何も食材等が入っていない場合であればそれでもいいけどなかなか難しいだろうから常温保存(もちろん高温多湿は避ける)」で最適な味の状態になるのを待ち、その後「冷凍」がいいと思うよ。
つまりは焙煎仕立ての豆を購入してきたら「好みの味になるまで常温保存し、のちに冷凍保存」という工程になるんだけど、まぁ店頭に並んでいるコーヒーの大半の場合は既に少なくとも焙煎後2,3日は経過しているはずだから豆を購入してきたら即冷凍でもOKっていうことにはなるかもしれないね。
飲む際に注意すべきは冷凍保存した豆は(当たり前だけど)冷たいのであまり高温ではないお湯やカップが冷えている場合はぬるいコーヒーになるので常温の豆で入れる時よりも高温のお湯で淹れるようにしよう。
また、珈琲豆は冷凍庫から出して常温にさらす段階で結露発生の恐れがあるので、冷凍庫から出した豆はすぐにまた冷凍庫に戻すかまたは一回に飲む量ごとに小分けしてその都度消費していくのがベストだよ。
ところで、今話をしている珈琲豆の保存方法はあくまでも珈琲『豆』の保存であり、『粉』のことではないんで、そもそも『粉』の状態で購入してきた場合はその酸化スピードの速さたるや分単位秒単位で劣化していくものなので、購入後は即座に冷凍、いや即座に飲んじゃおうね。
赤澤珈琲研究所 代表 赤澤 智