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2021-09-05

文明通信2021年9月号

文明通信2021年9月号表
文明通信2021年9月号裏

「ペーパードリップで美味しく淹れる方法(初級編)」 


先月に引き続き今秋発売の「世界一わかりやすい珈琲の本」でこの度加筆された部分である「ペーパードリップで美味しく淹れる方法」の初級編を特別に全文先行掲載します。 
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我が国で最も多いレギュラーコーヒーの(個人での)淹れ方は「ペーパードリップ」なので、これから「ペーパードリップでおいしく淹れるコツ」を「初級・中級・上級」と三段階に分けて話していくね。 
まずは「初級編」。ただし、全編においての絶対条件大前提があるんでそれだけは守ってほしくて、それはズバリ「良質で新鮮な豆」を使用すること。 
それからこれは理系が大の苦手で超ド文系の私が言うのも変だけど、全て「科学」で考えていくということとし、曖昧で感覚的な要素は一切排除していくよ。 
OK?では「初級編」はじまり~ 
例えば朝の忙しい時や勤務先の休憩時間などでコーヒーを淹れようっていう場合、時間もそして器具なんかの設備も限られているよね?そんな環境下で最大限に美味しく淹れる方法を伝えていくよ。 
まずは「美味しく淹れる【技術】」のように考えないことが大事で、最大のポイントは「常に一定の手順&手法で」淹れるということなんだ。 
コーヒーの抽出方法は大きく分けて①浸漬式と②透過式があって(くれぐれも名前を覚えたりしないでいいからね)、サイフォンやフレンチプレス、ターキッシュ、そして紅茶なんかは①の淹れ方で、ペーパーやネルなどのドリップは②。 
① は「コーヒー粉とお湯を一体化させて」一定時間放置またはボーっと見てればいいだけ。 
② は「コーヒー粉の層にお湯を通過させる」ため片時も目を離せない。 
今の書き方でわかったかもしれないけど(笑)どっちが複雑で淹れる人によって味に違いが出やすいかわかる? 
そう、②のほうだよね。「常に一定の手法で」というのが②のほうが工程上多く、複雑になってるからなんだけど、ここはぜひ難しく考えないでほしいんだ。 
大事なのは「豆の量、メッシュ(挽き目)、お湯の量、お湯の温度、蒸らしの時間、湯投の量」これらを毎回一定にすることに尽きると思わない?というよりこれらを一定にして好みを探っていくのが最もシンプルかつ近道で、そこから好みを見出すのはコーヒーの銘柄や豆の質及び豆の分量だけの状態にしておけばいいってこと。 

以上を踏まえて「ペーパードリップで美味しく淹れる方法(初級編)」の手順を以下に述べるね。 
① 好みの豆の量を決める・・・全国平均は1杯あたり10gとされているからまずはそれを元に増減させてみて。 
② メッシュ(挽き目)・・・ザックリ言うと平均的挽き目(中挽き)とは「ザラメより細かく、グラニュー糖よりは粗い」という感覚をもって目視して確認してみて。 
③ お湯の量・・・自分が使っているカップに必要な量。 
④ お湯の温度・・・沸騰したお湯でOK。※湯温は92,3度あたりが最適と言われているんだけど⑥で述べる注ぎ口の細いケトルに移した時点でそれだけですぐに湯温は92,3度になるし、そもそもいくら沸騰したお湯を使おうが浸漬中の粉の温度は最大でも92℃くらいまでにしかならないという実験結果も出てるんで気にせずお湯は沸騰させよう。 
※お湯の温度の詳細については「上級編」を参照 
⑤ 蒸らしの時間・・・20秒からせいぜい1分以内にとどめるべし。それ以上になるとこちらが意図してないのに抽出が始まってしまう。 
⑥ 湯投の量を一定にする・・・まず大前提として、注ぐお湯の量は「ドリッパーからサーバーに落ちるコーヒー液の量と同じだけ注ぎ足してあげる」という考えが最重要。 
つまり「出るだけ入れてあげる」ってこと。ドリッパーが台形状のものもあれば円錐状のもの、穴が1つのものもあれば3つのものも色々あるけど、それはどうでもいいからそこから出てくるコーヒー液と同じ量を湯投するんだ。いずれにせよ通常のやかんの注ぎ口では太すぎることに気づくと思うんで口の細い専用ケトルを用意するのが理想だけど、勤務先や登山の最中(いきなり登山出てきたよ!)にそんなもの無いという場合は「計量カップや紙パック」でもいいのでとにかく「先の口の細いもの」に熱湯を移し替えて湯投してみて。特にドリップにおける「匠の技」とかなんとかっていうのはここの⑥の部分が多いと思うんだけど、「技術」とかそういうのいいからとにかく「抽出されると同量のお湯を注入」ってことだけ気を付けてみて。 
あくまでも「良質な豆」を使用することを前提としてだけど、「蒸らし後」湯投の最初は(※中級編では注湯は「お湯を置くように」などと表現してはいるけど)結構勢いよく注いでフィルター内で粉が暴れようが(ある意味紅茶でいう「ジャンピング」となりそれも良しで)、入れ過ぎてドリッパーに湯溜まりが出来てもいいんで、その後に抽出量と同じ量だけお湯を足していくという方法が簡単でそれでも全然いいよ。 
初級編なのに長くなったけど大事なことはとにかく「常に一定の手法」であり、例えば「お湯は沸騰したもの」と決めておくほうが毎回一定の温度になるわけで、あとは「コーヒー豆の量」だけで個体差を生むような状態にし、他の要素に神経を使わないでおくことが美味しさへの最短ルートであるっていう考えね。 
続く「中級編」ではもう少し突っ込んだ話になるけど、まずは今回のこの「初級編」が基盤になってるからここで読むのをやめても大丈夫(笑)時間ある人だけ「中級編」へGO! 
「中級編」及び「上級編」は今秋発売の冊子(店内で全文閲覧可能)をお楽しみに。

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