文明通信2021年3月号
「痛快活劇六角橋焼小籠包」
お向かいにある「六角橋焼小籠包」さんが3/8に店舗拡大リニューアルします。そうですこのご時世に「拡大」です。「攻めて」ます。このことは個人的に本当に爽快かつ痛快で、ひとつのお店のサクセスストーリードキュメントとして放送でもされたら良いのにと思うのですがされそうにないので私がこの度勝手にストーリーテラーになります。
今からちょうど10年前、「六角橋焼小籠包(以下「六小さんに略します」)」はオープンしました。珈琲文明のオープンから4年後のことで、この4年の間に既にそこにあったお店は2つ廃業しており、3つ目の新たに出来た六小さんはどうなるんだろうなぁと思っていました。
創業当時のTwitterでは店主の高梨さんの自虐的ツイート(?!)が炸裂していました。
「今日も暇だった」「雨だから暇は甘え」etc.ただし単なるネガティブツイートオンリーではなく、調子が良かった日は本当に純粋に喜びのつぶやきをしているところがピュアで好印象で、私自身純粋に応援していました。
後日談で知ったことですが、どうやら私がかつて彼に「ブログは毎日書かなきゃダメだよ」と言ったらしく、すると彼はしばらく(1,2年)本当に毎日(結構なボリュームの)ブログを書いたりもしていました(だいたい書かなきゃ「ダメ」ってなんだ(笑)かく言う私がそもそも毎日なんて書いてないのに・・・(苦笑))。
その後、「混ぜソバ」がメニューに加わったりして徐々に軌道に乗ってきた六小さんと、お互いに「ひと月でこうなったら理想的である数値(人数、売上等)」という目標を掲げ、同時に達成したならば祝杯をあげようという目標を決め、達成し、みなとみらいまでシュラスコを食べに行ったりもしました。10年前の創業当初からメニューにあった「タピオカミルクティー」に関しては個人的に「タピオカってそんなに需要あるのか?」などと勝手に悲観的に思っていた数年後「タピオカバブル襲来」となり、通販で大当たり。
なんだかこれだけ書くと奇跡的なタイミングにより運よく当てたみたいですが、それなら昨今の雨後の筍のように出てきタピオカ屋は全部儲かっていることになりますがそうじゃないわけで、六小さんはまだタピオカがブームになる前から学校の文化祭等への卸の通販として特に検索エンジン、SEO対策(このへん私はとても疎い世界なのですが)にしっかりとお金をかけて取り組んでおり、ゴマキ(元モーニング娘)が自身のブログで紹介するほどにもなっていた後でのタピオカバブル襲来なので、元々しっかりと発火していた中でのバブル燃料投下(?)による大爆発に至ったといえるのです。
去年の今頃(3/10でした)、私がやっているカフェラボが主催した「小さな飲食店が【比較的】大きな売り上げをあげるコツ」という講座のゲストスピーカーとして高梨さんに喋ってもらい、その時点では彼は「高級食パン」のフランチャイジーも始めるという次なるステージの話で締めくくりました。そう、この時点ではまだ実際にパン屋さんがスタートしていませんでしたが今はスタートしています。その結果だけ少し報告しますと、複数あるフランチャイジー(※フランチャイズをする側つまり「本部」を【フランチャイザー】というのに対し、加盟する側を【フランチャイジー】と言います)の中、彼がオーナーの弥生台のお店は堂々一番の好成績を(瞬間的にではなく)一年通じて打ち出しています。カフェラボ講座に参加した人へも一年を経て逆算して強烈に説得力を持ったこととして主催者側としても喜ばしく思います。(異例の裏面またぎ。裏面に続きます。)
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個人的にとても興味深いことがあってそれは10年前の創業当初の本当に来る日も来る日も暇だった状態が長かった店というのは(14年前の珈琲文明がそうであったように)、どうにかこうにか軌道に乗って順調になってもその成功には懐疑的であり続け、保守的で守りをいつまでも固めていたいという意識になる店主(私がそうです)が多いです。
最初から売れまくってるお店は敗北を知らないのでイケイケドンドンで多店舗展開したりするのもわかりますが、一度本当に底辺を知り、「廃業の肌触り」まで感じている店主は攻めの一手に対し手は震え二の足を踏むような気がするのですが、彼は思いきり良くアクセルを踏むことも出来る人、というのが私自身凄く勉強になるし今後の参考にもさせてもらっています。彼は珈琲文明や私のアドバイスなども色々と参考にしてくれたりそれを自店に反映してくれたりしていますが、それは私も同じことでむしろここ最近は断然私のほうが彼に(特にものの考え方などに)影響されていると思います。これからもお互いに切磋琢磨し、共存共栄をはかって参りたいと思います。
さて、ここまで書いておきながら六小さんの痛快活劇の核心部分には実はまだ触れていません(え?!)。これから述べることが最も私が言いたいことになるのでぜひ最後までお読みください。大事な部分なのでここから少し文字が大きくなります。
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組織が繁栄するには強烈なトップのリーダーシップの他に、トップの人に欠落しているものを埋めるものを持っている強烈なNo2の存在(タイプとしてはトップと対照的な人が多い)が重要です。六小さんには創業当時からSさんという強烈なNo2がいます。
Sさんは高梨さんの前職(某大手ファミリーレストラン江の島店の店長)の下で働いていた時から既に只者じゃなかったそうです。
そんなSさんを六小のオープニングから起用していながら当初はやはり来る日も来る日もお店には閑古鳥が鳴くばかり・・・
でもお店がどうなろうがバイトのSさんには賃金を払わなければなりません。
ここからは高梨さんから聞いた話になります。
Sさんは六小が軌道に乗るまで賃金受理を拒んだそうです。
もちろんただのボランティアとも違います。実際、傍目から見てSさんはとてもしなやか&ストロングスタイル(!?)で、高梨さんにもよく指示を出したりしています(笑)。
縁の下の力持ちというよりも普通に表舞台でパワーを発揮しています。
そしてやがてそのパワーは芳しくなかったお店にいよいよ結実します。
売上がグングン伸びてついに法人化した六小さんはSさんに対してバイト代は言うまでもなく、プラスαでボーナス(結構な額です!)をSさんに支払うようになりました。
これが痛快じゃなくてなんといえばよいでしょう?
こうした痛快活劇はまだこれからもさらにパワーアップして続くことでしょう。
この痛快活劇をすぐ向かいにいながらこれからも毎日見届けられるというのはこちらも痛快であります。リニューアルした六小さんにぜひ皆さんも一度二度三度足を運んで(運ぶというより珈琲文明から2秒です)みてください。
※ひとつ個人的な願いとしては3/8のオープンからしばらくは多くの人が訪れるでしょうから少し日を置いて(具体的にはGW空けくらいから)落ち着いてから行っていただけたらと思います。よろしくお願いします。
六角橋焼小籠包の向かいで傍観している店主 赤澤 智