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2017-04-05

文明通信2017年4月号

文明通信2017年4月号表
文明通信2017年4月号裏

「コーヒーを淹れることは特殊技能でもなんでもない」

あくまでも個人的な考えではありますが、私が考える美味しいコーヒー、その重要度の比率は、「豆そのもの(生豆)70:焙煎29:淹れ方1」であると思っています。
詳細は拙著「世界一わかりやすい珈琲の本」を参照していただくとして、今回はこの「淹れ方が占める割合なんていうのはほんのわずか」という話と、ひいては「コーヒーを淹れる人は特殊技能を持つわけでもなく偉くもなんともない(笑)」という話を論理的に(?)述べていきたいと思います。
コーヒー豆そのものは「原材料」ですよね?そしてそれは特に何か調理されるでもなく(焙煎は別として)そのままお湯で抽出されるものであり、それを飲む際にはそのままかあるいは砂糖やミルクを加える程度で、しかも砂糖やミルクは淹れる人ではなく飲む人が勝手に入れるものです。
シェフや板前さんが行う調理はソース、出汁に始まり、各種調味料やスパイス等、それらのレシピや工程は複雑で多岐にわたり、しかもそういった料理が何種類もあるのですから、
当然調理をする人は「技術」や「経験」が必要になってきます。
ところがここで例えばその料理が「肉だけ」で味付けは一切せず、そのまま出して、
それを食べるお客さんはソースもなく、せいぜい塩とコショウだけがあるという状態の場合、そのシェフによる技量はさほど重要ではなく、ほぼ「肉そのものの質」そして「焼き加減」で決まる、というよりそれ以外に何が大事でしょうか?フライパンの性能でしょうか?肉を入れる角度でしょうか(笑)、まぁ火力や使用する油の良し悪しもありましょうが、「肉そのものの質」が最重要であることに異を唱える人はいないのではないでしょうか?コーヒーも同じです。というよりさらにシンプルです。水が重要?はい、我が国の水質レベルは世界に誇れるもので、かつ軟水ですのでもとよりコーヒー抽出に適しています。
そのようなわけで、コーヒーを淹れるという行為そのものは技術でもなんでもないのです。
にもかかわらずこの「抽出行為」に果てしない意味を作り出し、それをまことしやかに「伝授」する学校もあります。かくいう私もしっかりそういう学校に一応行きました(笑)。
補足しておきますと、「分量」及び「計測」、つまり「何グラムの豆を使い、どれくらいのお湯を入れるか」等、そしてネルやハンドドリップであれば「蒸らし」の秒数、サイフォンやフレンチプレスであれば「放置(笑)」の秒数などはシビアに、いや、システマティックに粛々と行うことは大事ですが、いずれにせよこれらのことを技術とは言いませんよね?
以上のことから、コーヒーを淹れるための技術は必要なく、抽出方法、手段はドリップでもサイフォンでもプレスでもなんでもいいと思います。中でもサイフォンやプレスは本当に淹れる人の実力が関係ないとても簡単なものです。ただしこれらは、豆の持ち味がダイレクトに出ますので、質の悪い豆を使うと救いようがないくらいに不味いものになるということは言っておきます。

赤澤珈琲研究所 代表 赤澤 智

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