文明通信2017年1月号
「カフェ経営という仕事観」
ブラック企業、過重労働、サービス残業、等の語句が叫ばれるようになって久しいわけですが、私が以前勤めていたところは、もしもブラック企業というものに定義付けがあるのであれば、おそらく(いや確実に)真っ黒だったと思います(笑)。
しかし、私が個人的に考える仕事の重要な側面として「大変だけど嫌ではない」というのがありまして、私の前職はまさにそういう感じでした。
「好きなことを仕事に」ということよりもまず大前提として仕事は「嫌ではない」ことはとても大切なことです。今の私のこの仕事(店舗経営)ももちろん「大変だけど嫌なことではない(どころか幸せである)」と自信を持って言えます。
では前職と今の何が違うのか?これもしっかりと説明がつきますので今から述べますね。
前職(学習塾の運営)で山梨の教室運営を任された私はそこの教室長として勤務すると同時に山梨にある他の6つの教室のエリアマネージャーという職も兼務していたこともあり、新宿での本部会議や甲府での新人講師研修講義等、その往復でそれぞれ4時間くらいはかかり(富士吉田から甲府というのも高速バスがない分、新宿までと同じくらい時間はかかります)、自分の教室に帰り着いた時は既に生徒がみんな帰ってしまったあとということも多々ありました。もちろん会社や組織としては必要な業務を担っていたということも重々承知なのですが、自分の教室、自分の現場における最も根幹である「自分の教室の生徒や講師達と顔を合わせ意思疎通をはかる」という行為が疎かになっていたことは否めません。
一方で現在のようなカフェ経営は、
「受注(オーダーを受ける)」「生産(コーヒーを淹れる、ケーキやカレーを作る)」「流通(席まで持っていく・笑)」「小売(お会計)」という超ミニマムスケールではありますが、いくつもの企業が合わさった総合的な業務内容でありながら、その実、その業務内容全ての工程に自分の「意思」もそして「意志」も反映させることが出来る仕事です。
全て目に届くクリヤーな範囲の物事の中で働いていることは仕事としての実体感(ダイレクトさという点で)がハンパじゃないのです。
曇りも闇もない(天井の空模様は変わりますが・笑)、晴れやかでスッキリした心持ちで運営することが出来ている珈琲文明は本当にお陰様で今年の7月でついに10周年を迎えます。
今年も、これからも、どうぞよろしくお願いします。
珈琲文明 店主 赤澤 智