文明通信2015年2月号
「え?今回はゴーストライター!?」
かつてこの文明通信の紙面に書いた「食器棚(※2012年6月号)」と「梁(※2010年8月号)」の記事をお読みになったかたが、これら食器棚と梁のことを『心の逸品展』で紹介したい、とおっしゃってくださり改めて取材を受け、ライターさんが書いてくださった文章が大豆戸ケアプラザの芸術祭参加という形で第三回「心の逸品展」に出展される、という出来事がありました。感謝です。今回はそのライターさんが書いた文章を掲載します。
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「神棚みたいな食器棚」横浜で珈琲専門店を開業したい。それは、私の長年の憧れでした。横浜に住んだこともないのに、イメージがどんどん膨らんでいました。不思議ですね。けれど、現実に動き出してみるとイメージだけでは、道が遠すぎる。思案検討の結果、候補地を二つに絞り込みました。その一つを見に行ったのですが、何か違うような気がする。一緒に行った妻は「呼ばれていないような気がする」と言いました。で、もう一つの候補地、白楽に行きました。この地に初めて降り立った時のことは忘れません。活きている商店街。―ここだと思いました。ドンピシャ。一目惚れ。細い路地の仲見世商店街に何としても店を出したい。妻に訊いたら、答えは「呼ばれてみたい」。あの日、仲見世商店街を何往復もしました。気持ちを確かめ、鎮め、ときめいて。不動産屋を訪ねたら「空き物件はない」と。もう、待つ覚悟を決めました。ここしかないんだから。半年たってから、空き店舗の情報が入りました。五十年続いた老舗衣料品店『駒屋』が閉店するというのです。閉店といっても、勇退。倒産とかじゃない。おなじみのお客さんに、感謝の閉店セールを半年すると聞きました。待ちましたよ、もちろん。合計すると一年待ったことになりますか。この一年をどう思うかですが、私にとっては本当に意味深い時間でした。どのような店にするか、じっくり考えられたからです。じっくり考えて内装に取り掛かったのですが、大きく良い方向への変更もあり、よい風が吹いてきた感じ。2007年7月7日、六角橋に『珈琲文明』は開店しました。店の中央にある、開閉式の食器棚は『駒屋』の店主・新海さんが日常生活で使っていたものを譲り受けたものです。大工さんに頼み、加工したものですが、初めからここにあったかのように馴染んでいると、お客さんから言われます。材質は桜だそうですが、長年使い込んだ良い色合い。取っ手がおしゃれで、開閉するたびにうれしくなります。食器棚の中から、健全経営できれいな商売をしてきた『駒屋』の空気が流れ出てくるようで、私にとっては食器棚というより、神棚みたいな感覚です。はじめて来ても なつかしい。『珈琲文明』はそんな店です。相反する二つの要素が同居する感覚。それはこの食器棚にも言えます。古いのに斬新だと私は思います。
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この後、「昔からここにあった梁」という文章が上記と同じ位の分量で続くのですが、ここでは紙面の都合上割愛させていただきます。尚、HP内「マスターの日記」、及び「珈琲文明フェイスブックページ」等では完全ノーカット版にて掲載しますので、「つづきはウェブで!(笑)」お願いします。また、この「心の逸品展」の冊子もいただきましたので冊子は店内にて閲覧可能となっております。
珈琲文明 赤澤珈琲研究所 代表 赤澤 智