文明通信2015年1月号
~当店のカップは何故「陶器」なのか? ~
2015年の幕開けと共にコーヒーカップをリニューアルしました。 「陶器」であることには変わらないのですが、さて、何故当店のカップは磁器ではなく、陶器なのかについて述べてみたいと思います。 「陶器」と「磁器」の性質の違いを説明しますと、 ・陶器は、熱しにくく冷めにくい (熱伝導率が低い&保温性が高い)。 ・磁器は、熱しやすく冷めやすい (熱伝導率が高い&保温性が低い)。 という特徴があります。どちらが良いか悪いかではなく、当店の意図に適しているほうを選ぶとそれは「陶器」ということになるのです。もう少し具体的に説明しますね。 出来たコーヒーを陶器に注ぐと、その瞬間だけ急激に温度は下がります。 しかしその後はゆるやかに下がります。一方、磁器に注ぎますと、瞬間的にはあまり下がりませんが温度の下降速度は速く、刻一刻とグングン下がっていきます。 この特徴に当てはめると例えば、あまり高温では抽出しなかったため出来上がったコーヒーも最初からそんなに熱くないのでもう一寸たりとも冷ましたくなく、かつ5分~10分くらいのうちに飲み終わってしまうことがわかっている場合は磁器のカップのほうが適しています。 この逆のことが陶器のカップに言えます。当店はサイフォン式で、高温抽出かつサイフォンのままお持ちしますので、カップに注いですぐにゴクっと飲むとおそらく口の中が火傷します。 コーヒーを飲む時の最適温度は68℃と言われています。これは、68℃より高いと苦味が強すぎ、また低いと酸味が強すぎる傾向があるゆえ、苦味と酸味のバランスが良いポイントは68℃近辺ということです。ですから高温抽出したコーヒーを陶器に注ぐとその瞬間はグッと温度は落ちます(とはいえ68℃より数段高い温度です)が、その後は比較的長い時間温度は保たれます。当店では天井劇場の仕掛けから「26分以上店内にいることを推奨」していますので保温性の高いカップのほうが適しています。また、一杯半の量があるため二度目に注ぐ際に既にカップが保温されてる状態が望ましいのです。以上の理由から当店のカップは陶器製のものを使用しております。さらにもうひとつこれらの理由と同じくらい、いやそれ以上に重要な理由があります。 それは、単に個人的な(見た目の)好みです(笑)。新年の幕開けは新たなカップと共に。2015年も珈琲文明をよろしくお願いします。
赤澤珈琲研究所 代表 赤澤 智