文明通信2024年2月号
「1年間連載してきた【絶対に失敗するカフェの作り方】がとうとう終わります」
去年の今頃の文明通信で「週一連載【絶対に失敗するカフェの作り方】はじめました」というタイトルの号を書きました(2023年3月号参照)。
大和書房さんが手掛ける「I am」という(「好きなことや得意を仕事に」がテーマの)ウェブメディアでして、連載開始からほどなくしてベスト5ランキングの5位にチャートインしたのを見て「凄い嬉しい!でも全ての記事が5つの中の5位だったりして・・・」などとX(旧Twitter)で呟いたらI am公式の方から「全コンテンツあわせたら70以上ありますよ~!」というレスをいただき驚愕したもので、その後回を重ね「ベスト5中3つ自分の記事がランクイン(※写真①)」したり最終的には「1位~3位を独占(※写真②)」したりして多くの開業or脱サラ希望の読者の皆さんに支持していただけたことを大変嬉しく思います。
さてこの一年間続いてきた連載も2/8(木)お昼12時の配信でついに最終回を迎えます。誰でも無料で読めますのでよろしければご覧ください。
今回ここ文明通信では現時点での最新話(最後から2番目)の記事を貼り付けておきますのでこちらと最終話を併せてお読みいただけると嬉しいです→
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
~(第49回)長文ゆえ前半部割愛にて後半から~
他にも会社員ではあり得ない個人店の醍醐味というものがあります。
まず、ワンオペ個人店は代表が常に現場にいる状態です。
大きな会社ですと、社員が何か大きなヘマをしてしまって問題になると上司が鎮静化を図り、またクレームにしても肩書きある社員が対応することでお客様側も溜飲を下げるといったことがよくあります。
ワンオペ個人店の場合、そこにいる店員がその店の「最高執行責任者(COO)」でもあり「最高経営責任者(CEO)」でもある、全てがいきなりトップ対応なのです。
そう、全てをわかっている人間が、直接お客様に接しているわけです。
メニューの原料、素材のことや店内にある家具や調度品に至るまで即答で返すことが出来て、クレームにも回りくどい対応ではなくいきなり代表が対面して誠意を尽くして謝罪し、場合によっては陳謝をせず厳しい態度で臨みます。
いずれにしてもお客様にしてみれば常に目の前にはそのお店の「ラスボス」がいるというのはどちらかというと望まれていることだと思います。
またそういう状態を好ましく感じる人が、店主がオーナーである個人店に足を運ぶのだとも思います。私もそういうお店を好んで選びます。
もちろん、小さなカフェを立ち上げようとしている人は、これからお店の代表として様々な問い合わせ等に理路整然と淀みなく話し対応していく必要があります。
これをあまり不安に思わないでください。
店舗を作る際から運営までの日々のあらゆる工程にあなた自身が噛んでいるわけですから結果的にあらゆることに対応出来てしまいますから、どうか心配なさらずに。
もう1つ、オーナー個人店のメリットがありまして、それは「即断即決即時処理」です。
先日こんなことがありました。
アジア系外国人留学生と思われる女性が帰り際レジで、「ここのコーヒーカップはどこで買えますか? 日本の思い出にこのカップを買って帰りたいんです」と上手な日本語で言って来たことがあり、私はなんだか日の丸を背負った気分になりました(笑)。
「ちょっとお待ちくださいね」と言い、「ここのコーヒーカップは岐阜県から仕入れていて、しかも一般の店舗ではなく業務用に卸しているものなので買うのは難しい(この表現でどれだけ日本語が伝わったかわかりませんが)のでよかったらこれ新品じゃなく使い古しですがこれ持って帰ってくださいプレゼントフォーユー!」と言って洗浄済みのカップ&ソーサーとスプーンを箱に入れて差し上げました。
これが、いちいち上に許諾を得る必要があったらこうはいきませんよね。
彼女は涙を流して喜んだ後でこちらに向けられた最高の笑顔はこっちにとっても最高のギフトでした。
こんな時に私は思います「個人店オーナー最高!」と。(中略)
自営業とは、文字通り「自ら営む」ことです。
この「自ら」の軸がブレたり、ましてや他力でもし上手くいかなかった場合、それこそなんのために開業するのでしょう。
考えてみるとカフェの仕事は、そこで「注文を受け」「作り」「運び」「提供し」「対価を得る」という、メーカー、流通、小売、がそこに凝縮されているとっても原始的かつ総合的な職です。ある意味これまでやってきたどんな仕事も役立ちます。
もちろん、企業に比べるとあまりにもちっぽけなスケールではありますが、全工程を把握することが出来て、そのそれぞれに自分の意思や意志を反映させることが出来るのです。
煩雑多岐に渡りますが、やはり「曇っていない」すなわち晴れやかでスッキリした心持ちで毎日を過ごすことが出来ます。
これは「幸せ」と言って良いと思います。
私が自分のお店をやろうと思った動機を今一度書き記しておきます。
「人生は一度。だからもっと思い切って、
直接的に物事の全工程に関与し、全責任を負い、
己の意志を貫き通して人生を終えたいなという思い」
あなたのお店が黒字で長く続きますように。
あなたのお店が繁盛店ではなく名店と呼ばれますように。
次週、ついに最終回です!
珈琲文明店主・赤澤智でした。