文明通信2015年8月号
「結果的に自然健康塗料でした」
当店内の木材の塗料はドイツのリボス社の「自然健康塗料」を使用しています。
天然の素材を生かしつつ、アレルギーにも対応し、野菜洗浄、果物野菜コーティング、ワインやビネガー製造などに使用する油からとれた溶剤など、その製品基準がなんと「食品基準」を満たしているという極めてヘルシーな塗料です。
しかし、正直に申し上げます、私はこれらのことをあらかじめ知った上でこの塗料を導入したわけではありませんでした。
素人の自分でも塗りムラが出来にくく、比較的綺麗に塗ることが出来るものは天然塗料のほうだと職人さんに教わり、もちろん塗料の値段は高くなるが自分も作業に参加することで人件費が節約出来るのでトータルで考えたらコストはそんなに変わらないとのことだったので、それであればなんとなく天然モノのほうがきっといいだろうといった程度の軽い気持ちからでした。
私が理想としてた色は「濃い目のこげ茶色」でした。「ウォールナット」というものが近かったのでそれを選び、実際に外の看板と袖看板の両方とも私が自分で塗りました。
しかし床やカウンターは大工さんが木目を生かすためにかなり薄めに塗りました。
私の思惑としての「濃い目のこげ茶色」とは異なり、私がもっと濃く塗ってほしいと言うと、「なんて勿体無い、せっかくの木目が見えなくなっちゃうよ!」と大工さんに諭され、木を愛でるタイプの大工さんに結局根負けした感じになったのがカウンターなのですが、確かにイメージしていたものよりも明るめ(薄め)の色に仕上がったことは、先進的な感じになって今となっては良かったと思います。
ドラマ「孤独のグルメ」で主人公の井之頭五郎氏が「ここは昭和レトロなんかじゃない、平成モダンだ!」と言ったそのセリフがなんだか全てを言い得ていたようで嬉しくなりました。
当初はコストや作業効率の面、さらには自分も塗装に参加したんだという自己満足感から選んだだけの自然健康塗料(ちなみに壁の「漆喰」も同じくリボス社のものを使用)でしたが、実に結果オーライといえましょう。
先に述べたヘルシーな成分のこともそうですが、何より私が強く実感していることがあります。それは、一日の最初、まず私がこのお店に入ってきた瞬間に木の香りがするのです。
8年たった今でもはっきりとわかるほどに(塗料のにおいではなく)木の香りがします。
営業中はさすがにコーヒーの匂いが充満していますが、一日の一番始めに私は木の香りに包まれながらその日が始まるというのは幸せです。
あるお客さんには「ここは綺麗なエネルギーが流れている」とまで言っていただけたことがありまして、それがこの自然健康塗料によるものなのかどうかまではもちろんわかりませんが、ともあれ気持ちの良い空気が流れることはもちろん嬉しいことで、結果的にとても良い選択をしたと思っております。
赤澤珈琲研究所 代表 赤澤 智