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2014-05-05

文明通信2014年5月号

文明通信2014年5月号表
文明通信2014年5月号裏

「土壇場の大転換」

サッカーW杯が迫っています。前回大会の岡田武史監督は私が尊敬する指揮官の一人です。理由は「覚悟を決めた決断とその後ブレない姿勢」なのですが、大切なポイントはこの決断に至るまでは先入観に頼らず、恐ろしいほどの柔軟性があるということです。岡田ジャパンの最終的な布陣及び戦術が決定したのは、なんと大会一ヶ月を切ってからであり、最終布陣での実践の場を踏むことなく、つまりぶっつけ本番で臨んだことになります。尋常じゃありません。こんなこと普通は出来ないし、やりたくないです。前回大会の監督がザッケローニやジーコであれば、「本田ではなく中村俊輔を」「川島ではなく楢崎を」間違いなく起用していたはずです。いや、それが良いとか悪いとかではなく、とにかくそういう型で行ったはずです。地味な「守備重視路線」に土壇場で大転換し、多くの批判に晒される中での、「先入観抜きのまっさらな頭」で何が最善策かを考え抜き、最終結論が出たならば誰がなんと言おうとそれを貫く・・・この姿勢は先のフランス大会前のあの「カズ外し」にも顕著に表れていますね(個人的にはカズが好きですが)。さて、このような「土壇場の大転換」と呼べるものが、実は珈琲文明にもありました。それは、コーヒー屋の生命線、コーヒー豆のことになります。私は既にとあるコーヒーメーカーの豆を当店で扱うことに決めていました。正直、そこの豆が断トツで美味しかったということよりも総合判断で、他の豆との差はそんなに大きなものではないまでも、とにかく「新鮮な豆」を「たっぷりの分量を使用する」という方針だけブレないようにしようと考えていました。開業まで一年を切った夏、私は現場での経験を積みたくて軽井沢にある丸山珈琲で修行しました。今、「現場」と述べたのは「喫茶店内オペレーション」のこと、つまり「オーダーをとり、作り、出し、会計する」までの一連の流れを訓練したかったという理由だけであり、コーヒーに関することは完全にもう身につけた気でいたというのが正直なところでした。実際、丸山珈琲も今でこそ直営10店舗近く、豆の卸先としては全国に展開する有名店となりましたが、当時はまだ軽井沢本店のみでして、私はこのお店の存在も知らなければ「スペシャルティコーヒー」ということに関しての深い部分も何もわかっていませんでした。でも、美味しかったのです。ただひたすらに美味しかったドングリの背比べではなく、それまで飲んできたコーヒーよりも頭二つも三つも美味しかったのです。ただしスペシャルティコーヒーというのはコーヒーピラミッドの頂点部分であり、豆のグレードそのものが圧倒的に違うので、その他のコマーシャルコーヒーやプレミアムコーヒーとは値段が違いました。一般的な喫茶店のコーヒーが全国平均400円である中、またコンビニやファーストフードでは100円のコーヒーが台頭する中、600円以上の値段のお店なんかやっていけるのだろうか?岡田ジャパン同様、私がそれを実践で試す機会はありませんでした。様々な葛藤の中、自分だったら「普通の味のコーヒーを何回か飲みに行くのをやめても、凄く美味しいコーヒーを1回飲みに行くなぁ。そして同じ思いの人は必ずいるはずだ」という考えのもと、高品質高単価路線への大転換に踏み切りました。同じく、店舗内装コンセプトそのものに関しても実は「土壇場の大転換」と呼べることがありました。この話までするには紙面が足りなくなりましたので、つづきは当店ホームページ「マスターの日記」で今月末に配信する「裏・文明通信」をご覧ください。

赤澤珈琲研究所代表 赤澤 智

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