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2015-06-05

文明通信2015年6月号

文明通信2015年6月号表
文明通信2015年6月号裏

「あの日の設計デザイン事務所の人に伝えたい8年後の今」

当店では皆様にサイフォンのままコーヒーをお出ししているわけですが、さて、このサイフォン、これまでの8年間の中でいくつ破損したと思いますか?答は、なんと、ゼロ個です。はい、ただの一個もお客様による落下等の破損がないのです。それ以前にテーブルからサイフォンを落下されたお客さん自体がゼロです。
そして記憶が正しければ私が厨房内で落下させて2個ほど割ったことがありますが、
ともあれ、これは驚異的な数字だと思います。かといってこれを知ったことで今後お客様に変なプレッシャーは感じてほしくないのですが(笑)、何よりもこの8年間、皆様にはとても正しく、大切に扱っていただけたことに本当に感謝します。
なぜいきなりこのような話をしたかといいますと、開業前の内装工事前に以下のような出来事がありました。
かいつまんで述べても良いのですが、当時の熱さ(まさにヒートアップ!)そのままお届けしようと思い、乱雑な文章そのままに当時の自分の日記を貼り付けます。
ここに出てくる「サイフォンがそれだけ数多く必要ってことになり、破損もするから、ランニングコストがかかりますね」と言ってきた某設計デザイン事務所の人に、8年後の今の状況をぜひ伝えたいです。
お陰様で珈琲文明は間もなく8年!これからもどうぞよろしくお願いします。

珈琲文明店主 赤澤 智

~以下が日記の貼り付けになります。長いので適当に読んでいただけたら幸いです~
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いろんなことが初体験なのだが、やはり内装工事はその最たるものだ。
とっかかりとしては、とにかくデザイナー(設計士)を決定して、
その人とバッチリ疎通をはかり、あとは任せる、という形しかなかった。
さて、そのデザイナーであるが、これはやはり実際に俺がこれまで見てきたCafeなどの内装デザインで気に入った店を手がけたところを訪ねようと思った。
駒込にある、とある珈琲店がとても落ち着いた作りで、重厚な感じであり、
そこを手がけたデザイン事務所のことなどを訊くために、その店に入った。
テキパキした女性店主がいろいろと丁寧に説明してくれた。
この店はちょうどオープンしてまだ一年くらいで、しかも俺が短期で通ったCafé専門学校の卒業生でもあり、話も弾んだ。感謝。
そして手がけたデザイン事務所を紹介してもらい、俺の中ではもうここに決めようと思っていた。本当は絶対やったほうがいいとされる「業者間相見積もり」も、見せかけだけやってみようかとも思ったが、内心よっぽどのことがないかぎり、もうここにしようと思った。
後日吉祥寺にある、そのデザイン事務所を訪れ、そこの専務と話をした。
国金で融資を受ける予定だという旨を話し、その中の「担保も保証人も不要」という「新創業融資制度」というものを適用しようと思う、ということを言うと、少し失笑しながら、その専務は、「赤澤さん、保証人っていうのは、必ず必要なんですよ」と言ってきた。
これは俺もさんざん確認してきたことで、 国金にはこれまでに2回、相談だけの目的で既に行って、「自己資金が半分以上あることが条件で、無担保・無保証人が可能。その代わり利息が通常よりも1・2%上がる」ということで、国金の人とも話が完全に通じていた。
しかし、その専務はさらに、「逆にお金を貸すほうの立場にたってみてください、
相手が返せなくなったら困りますよね?」と、小さい子供に言い聞かせるように、
上から下への物言いに、少し困惑し、相手があまりにも自信満々の物言いなもんで、
実際俺が今まで考えていた融資は何かの間違いだったのかな?とも不安になっていった。
でもこの専務の話をすぐに信じるわけにもいかず、
「この件に関してましては、私ももう一回調べてみますが、東京と神奈川では違うかもしれませんし、そちらでも、ぜひもう一度調べてみていただけますか?」
といって、その日は終わり、後日、専務は社長も連れて、我が物件の現地調査に来た。
いろんなところの寸法をはかり、その後、三人でお茶をしながら、俺はいろんなことを訊かれたので、俺は基本三大重要コンセプトを述べると、
その社長は常に切り返してきた。「珈琲はサイフォンで淹れて、サイフォンごとお客様に提供する形です」というと、
社長は、「サイフォンがそれだけ数多く必要ってことになり、破損もするから、ランニングコストがかかりますね」。
そして「注文が来てからアツアツのカレーを注ぐ、というカレーパンがあります」というと、専務、「食べててルーが飛び出してきて火傷するかもしれませんね」。
そんなこと超初期段階で既に考えた上で、想定内として、考えた結果の重要コンセプトなのに、なんなんだこのああ言えばこう言うみたいな切り返し文句は、と思いながらも、
「天井には空の絵を描いてそこに調光可能の特殊照明を照らし・・・云々」を言うと、
社長は一言、「飽きますよ」「お客様はおいしいコーヒーを飲みに来てるんであって、
天井見上げたりしにくるわけじゃないんですから」

 プチン!と切れた。俺は、「さっきから、何かと全て物事否定、否定で言ってきてますよね?その否定の切り返し文句にも何の説得力も感じないんですけど」
というと、とりあえず、向こうは謝罪をしてきた。そして、例の融資の話を、俺はその日もう一度国金に連絡して、確認をとった上で、専務に「やはり無担保・無保証人制度はある、とのことでしたが?」というと、今度は社長がまた俺を諭すように言って、間違いを認めない。別れ際に俺は、「とにかくもう一度調べてみてください」と言った。
結局、後日電話が専務からかかってきて、「申し訳ありませんでした。赤澤さんがおっしゃる通りで、新創業融資制度なるものがございました」との弁。
そして、平面図が出来たんで、ぜひいらしてご覧ください、とのことだった。
出来上がった平面図を見に行った。天井をぶち抜き、中二階を作り、という俺の案は、
最低1000万以上かかるとのことで、却下され、何のオリジナリティーも感じない、平凡な平面図を見ながら、
「今回、○○さん(駒込の店)から紹介を受けて、予算も少々上がろうが、他社をあたることなく、 私の中ではおたくにしようと、実は初めから決めていました。
しかし、あまりにもいろいろなことが合わなすぎると思うんです。
特に融資制度の話も、私が二度言って初めて調べて非を認めたかたちで、
特に御社のような開業のトータルアドバイザーなんて謳ってる会社のトップ二人が、
ご存じないなんて、あまりにも恥ずかしいことだと思いますし、この件に関して私は許すことはないですし、かといってお二人は人間的に悪い人ではないですし、
やはりここは取引関係をなくして忘れたいと思います。
断りの挨拶なんか電話で済ませてもよかったのかもしれませんが、
あまりに無下に断るというのは、紹介してくれた○○さんに失礼だと思うので、
その一点のためだけに、今日ここにこうして来て、直接言いに来ました。
そして、○○さんのためだけに、おたくの会社の今回の失態なども他言しません。
それでは失礼します。」
と、その会社を後にし、後日専務からはあらためて謝罪文がかかれたハガキが届いた。
さて、これからアテがなくなった今、どうしたものか、
とにかくデザイナー探しにまた奔走することになる。
~文明ロードVol.22「設計・内装のドタバタ劇より~」

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