文明通信2025年8月号


「千の風の下、ハイジの家に行ってきました!」
この夏、家族で北海道大沼にある(故)新井満さんのご自宅を訪問してきました。
名曲「千の風になって」生誕の地であり山林に囲まれたずっとずっと訪れてみたいと切望していた場所です。
奥様の紀子さんに畏れ多くも訪問の打診をすると「大歓迎です」という返答をいただき、狂喜乱舞しました。
かつて「富士山を世界遺産にしよう」なる趣旨のシンポジウムのようなものがあり、新井満さんの他に(故)中曾根康弘元首相や長澤まさみさんなどが登壇されたその会に我々夫婦が招待され、その後の懇親会パーティーであまりに場違いな空気に押しつぶされそうになりながら隅っこのほうでおとなしくしていた私たちの元に満さんと紀子さんがやって来て、しかもずっとそこにとどまってくださったので多くの関係者が入れ代わり立ち代わり新井夫妻に名刺を持って挨拶に来る度に紀子さんは「こちら近所の喫茶店のご夫婦です」と天真爛漫な笑顔で紹介してくれました。
肩書や地位や身分も一切関係なく、常にニュートラルな状態に身を置き、明るい日輪のような紀子さんを昔も今も私は大好きで、そんな紀子さんだからこそこちらもこんな大それた打診を行動に移せたのかもしれません。
多くの人は幼少の頃に観たテレビや漫画や小説の主人公になることを夢見ます。
しかしその夢を大人になってもなお持ち続け、具体的な手段を模索し努力するのは至難の業であります。
紀子さんは幼少時「アルプスの少女ハイジ」に憧れ(ここまでなら多くの少女が夢見ます)、そこから本当に実践的具体的手段として東京農工大学に進んだという話は痺れるほどカッコイイですし、満さんとの出逢いが長時間乗車する汽車の中で偶然隣に乗り合わせになったというのはロマンチックにもほどがあります・・・。
紀子さんは自身で「昔から何かを【育てる】というのが好きだった」と仰っています。
例えば「無から有、ゼロからイチ」を生み出すのがアーティストの満さんであるとするならば、「イチから∞(無限)に」育てて行くことに長けているのが紀子さんで、まさに奇跡の夫婦といえるでしょう。
一代で財を成した起業家実業家の中には都心のタワーマンションや数百坪のプール付き豪邸で暮らす人も多いと思いますが、新井邸の敷地は実に三千坪(珈琲文明300個分!)でそのほとんどは林です。
品の良いペンションのような家屋の他には満さんが戯れに(?)いや、「何もしない」をそこで「する」ために建てた方丈庵を模した「庵」があるくらいでその他はひたすらに木々の緑が占めており、放牧された羊が地面の雑草を食(は)み、そこで生まれた無数の植物の命を丁寧に大切に育てているのは「あの日の」ハイジ・・・。
真の豊かさとはこういうことを言うんだろうなぁと痛感しましたし、我が子にとっても一生の思い出、財産になったと思います。
この日、雨予報だった大沼公園は晴れ渡り、私たち家族を満さんも歓迎してくれているようで、抜けるような空に千の風が吹き渡っていました。
珈琲文明 店主 赤澤 智
※写真は大沼公園にある「千の風になって生誕の地モニュメント」。
建立されているのではなく地面に設置された平坦な造形には「駒ケ岳をはじめとした景観を活かしたい」というメッセージがあり、実に満さんらしいなぁと思いました。



~おじゃ丸の他店お邪魔しますのコーナー~
「詠月珈琲」
私がまだカフェラボはもちろん、書籍も出してない、一介のコーヒー屋のマスターだった頃、アメブロというブログで「カフェの開き方」なるものを書いていたことがあります。
複数筋からニーズがあったからというのも事実ではありますが、なんとなく自分自身の店舗運営の記録や整理といった意味合いもありスイスイ書いていたのを覚えています。
その後「他業種勉強会」のようなものに「カフェ開業講座」の講師として呼ばれたことがあり、その時に「ブログを読んで来ました」という方がいらして、その方はなんと北海道からはるばる飛行機に乗って講座を聴きに来てくれたのです。
それから10年弱の月日が経ち、その方はこの度札幌に「詠月珈琲」というお店を開くに至りました。
まだ何者でもない頃に書いた私のブログを熱心に読み込み着々と開業準備をし、ついにオープンを果たしたお店を私は絶対に自分の足で実際に訪れようと決めており、この度行って参りました。
(※かなり似たようなケースでかつて私の講座にはるばる北海道江別市から来てくださった「純喫茶ファロ」も訪問したかったのですが、ファロさんは既に開業から5,6年経って経営も盤石な状態と見受けられることもあり断腸の思いで訪問は見送り今回は「詠月珈琲」に絞りました)。
詠月珈琲の店内はダークグリーンと木目を基調とした重厚でシックなたたずまい。
トイレも含め天井が高いので圧迫感がなくくつろげる空間。
メニューで特徴的だったのがコーヒーに「ブレンド」というものが無く、全てシングルオリジンというラインナップ(この日はエチオピア、インドネシア、コスタリカでした)。
コーヒー以外にも紅茶やココアをはじめクリームソーダもありました。
スイーツも全て自家製でとりわけ「レモンケーキ」なるものが普段あまり見聞きしないものでありながらもスイーツメニューの筆頭にあったので迷わずこのレモンケーキを注文してみました。
甘酸っぱくてしっとりした口当たりは私が注文したエチオピア(中煎り)にもドンピシャのマリアージュでした。
オープンからまだ2か月、派手なオープニングキャンペーンや値引きをしないというカフェラボメソッドをしっかり守っているということもあり緩やかな船出となっていておそらく店主ご本人ももちろんでしょうけれど私も現状はドキドキであります。
ただコーヒーと音楽のことに関してだけはどんな場でも絶対にお世辞を言わないことに決めている私はここのコーヒーやスイーツを本当に美味しいと思いましたし、店舗内全体に関しましてもおよそマイナス面が見当たらないのです。
こんな素敵なお店を周りが放っておくわけがないだろうということを少なくとも私は信じております。
皆さま、北海道に行く際はぜひとも詠月珈琲に訪れてみてください。
〈詠月珈琲〉札幌市豊平区中之島2条3丁目1番1号 グリーンコーポ中之島101
InstagramやXもあるのでぜひチェックを!
【当店のカフェオレベースが使用されているドリンクが以下のお店でもご賞味いただけます!】
◇大衆酒場 立ち飲み “HOURS”・・・六角橋仲見世商店街の白楽駅から来る方の入口すぐ。
オーナーさんが当店のカフェオレベースを購入してくださっています。
カフェオレの他にもしかしたらコーヒーベースのカクテルやリキュールも楽しめるかも!?
◇Cafe141にて8/11(月)限定の間借り営業でYosh caféさんが出すアイスカフェオレで当店のカフェオレベース。が使用されています。
※場所・・・墨田区押上3-28-5 cafe141 時間は13時~16時です







