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2023-01-06

文明通信2023年1月号

「コーヒーカップが新しくなりました」

2023年の幕開けと共に当店のコーヒーカップが新しくなりました。
コーヒーカップの他にお冷のグラスも新しくなりまして、こうした当店での一連の食器類の仕入れ先については「おじゃ丸の他店お邪魔します」のコーナーとして裏面に詳しく述べておりますのでぜひ裏面も併せてお読みください。
さてこのNEWカップですが、これまでのカップに比べてやや小ぶりサイズ(というよりこれまでがやや大きめでしたのでいたって標準サイズといえます)とはいえ、提供するサイフォン内にあるコーヒーの総量は変わりませんので、これまで「約1杯半」と謳っていたものが「ほぼ2杯分」になったということになります。
コーヒー、とりわけスペシャルティコーヒーに関しては「温度変化」による「味変」を楽しむというのも1つの醍醐味なので、高温から順番にその特徴について説明しますと、
① 「高温」・・・苦みが先行し、その後キリっと直線的な味と香りが立っている状態。
② 「適温」・・・68℃前後と言われ、全てのバランスが良く奥行があり複雑で様々なフレーバーも感じることが出来る状態。
③ 「低温~常温近く」・・・質の悪い豆の場合ですとこの温度帯はそれはそれは不味くて飲めたものじゃないのですが、高品質かつ新鮮な豆に限り、コーヒー豆が持つフルーティな酸味が最も鮮明に感じとれる状態であるともいえます。
そもそもお店によっては提供時に①の状態には既にないお店もありまして、それは苦みや雑味エグ味を抑えるためにわざわざ抽出の時点で既に80℃くらいまで湯温を下げてから淹れるという手法で出しているということになりますが、私の考えとしましては「豆が最高品質のグレードのものなのであればその豆の持ち味を全て出し切る高温(抽出時は限りなく100℃に近い温度)が適しており、そもそもサイフォンは高温抽出であると同時に当店の場合はフラスコのまま提供になるのでお客様がすぐ飲み始めた場合の温度は確実に「高温状態」にあります。
もちろんゴクゴク飲める温度ではありませんが、古来から親しまれているコーヒーの美味しさの1つである「苦み」が最もハッキリわかるのがこの「高温状態」でありますので、この状態がしっかりと存在する(この段階が不要な方は単に冷ませばいいだけです)のが当店ですのでぜひこの①の味をまず堪能していただきたいと思います。
ところで、これまでのカップのような1杯半の場合、最初の1杯目でほぼ①と②の工程が終了し、次の半分は全て③の状態になるというペース配分になっていたのではないでしょうか?※あくまでも私の勝手な想像です。
今回この新しいカップ(約2杯分)になったことにより①と②を楽しめる時間が増えるといいますか、2杯目になっても②の「適温」の時間が結構長いということが想定できます。
それでそのまま飲み終えるというのも「粋な飲みっぷり」だとも思いますし、当店の天井劇場の26分が終わる頃は完全に③の温度帯になっていますので「明けたり暮れたりする時間」と共に③の状態も楽しんでいただけたらと思います。
そんな新しいカップと共に2023年も珈琲文明をよろしくお願いいたします。

珈琲文明 赤澤珈琲研究所 代表 赤澤 智

おじゃ丸の他店お邪魔します「若林洋食器店」

これまで使用してきた珈琲文明のコーヒーカップは岐阜県にあるお店から仕入れていたのですがそこのカップがこの度製造中止となってしまい「さてどうしたものか」と悩んでいた時にもともと15年前の創業時から当店で使用している様々な食器(グラス、ミルクピッチャー、シルバー類の他、なんとサイフォンガステーブルまでも)を仕入れていた野毛にある「若林洋食器店」に電話連絡をして相談してみることにしました。
この「若林洋食器店」、実はとんでもなく老舗でありまして、創業がなんと明治37年、実に百年以上続いているまさに老舗中の老舗です。
しかし私は老舗で伝統あるお店だからという理由だけでここから仕入れていたわけではありません。事実、最もメインである当店のコーヒーカップは他店から仕入れていたわけで、その辺は私もかなりクール&シビアに考えるほうであります。
そんな中、ある日当店のコーヒースプーン(和風スプーン)及びカレーパンのスプーンが少なくなったのでその仕入れ先だった若林洋食器店に発注しようとしたのですが手元にはもう品番のわかる納品伝票もありませんでした(下手すりゃ10年ぶりくらいの発注でしたので・・・)。でも過去の購入履歴等で判明するかもしれないという思いからまずは電話してみました。その時電話に出た女性Aさんが「お調べして折り返し連絡いたします」とのことで程なくして(本当にかなり短時間で)まず電話ではなく珈琲文明のInstagramに画像付きのDMが来ました。
しっかりとした挨拶文の次に「不躾で申し訳ございませんが画像を見ていただきたくメッセージを送らせていただきました」とそこにはコーヒースプーン&カレーパンのスプーンの画像もありました。
この対応に私は舌を巻きました。というのもこれにより少なくとも2つの面倒な工程が一気にカットアウト出来たからです。
即ち普通であれば、①Aさん「前回発注の○○は在庫がありますが△△はありません、カタログで画像を送りますのでメールアドレスかファックス番号を教えてください」②私がアドレスを送り届いたメールを開いて確認する。
という工程があったはずなのです。
ところがAさんは私にアドレスを訊くことなく当店のInstagramを検索し画像付きのDMをくれただけでなく在庫切れをおこしている商品の代替案として類似品の画像も貼り付けてくれたのです(2つどころか3つ4つの工程を省くことが出来ました)。
当店創業時の15年前はいなかったAさんではありますが、こんな人がいるこのお店はやっぱり信用出来るなと思い、スプーンの他にコーヒーカップの新調にもきっと有益な情報を得られるに違いないと思いAさんに相談してみました。
するとその翌日か翌々日でした(迅速!)。分厚いカタログが2冊、店に届きました。
カタログの数か所に付箋があってそこは全て「和食器のカップ」でした。
分厚いカタログの目次か索引から探すことになるかもしれなかった手間をここでもカットアウトしてくれています。
老舗だから選んだわけではなく、Aさんに相談すればきっと良いモノを探せるだろうという理由で行き着いたのが今回新調したコーヒーカップであります。
いつの時代もやはり「人」なんですよね。
このAさんに興味関心が湧いた私はこの度直接店舗に行き本人に話を聴いてきました。
歴史と伝統あるこのお店の二代目三代目の奥様ということでもない普通の店員さんでして、過去の職歴なども伺い色々と腑に落ちる点があり勝手に納得したりしました。
仕事が出来る人っていうのはどこの世界にもいて、そしてそういう人はどこに行っても活躍するもんなんだなぁと思いました。
「若林【洋食器】」なのに当店で仕入れているコーヒーカップは何故か【和食器】ですが(笑)、もちろん色々な洋食器は大充実していて、業務用だけではなく一般の小売の実店舗もありますのでぜひとも足を運んでみてください。

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