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2020-06-05

文明通信2020年6月号

文明通信2020年6月号表
文明通信2020年6月号裏

「ゆるやかに始動開始」

神奈川でも非常事態宣言が解除されました。でもこういうことは「0→1」「無→有」というデジタルなものではなくもっとアナログかつファジーであるべきという考えから当店ではしばらくの間まだ座席の間引き及び時間短縮(19時閉店)営業をつづけてまいります。
さて、飲食店である当店はご多分に漏れず客数売り上げ共に落ち込んでおり、とりわけ4,5月というのは例年の最繁忙月(祝日が多い故)なので対前年比の振れ幅はそれはそれはすごいことになっております(笑)。ただ、これほど原因理由がはっきりしている事柄もないわけでして、こんな時いつも思い出すのが元・三洋電機の副社長(故)後藤清一氏の遺された「何も咲かない寒い日は 下へ下へと根を伸ばせ やがて大きな花が咲く」という言葉です。そして同時にとにかくポジティブでいることが大切であると思っています。
拙著「人生に行き詰った僕は、喫茶店で答えを見つけた」が発売されたのが4月でした。出版スタッフの方と発売日のタイミングについては当初「オリンピックよりも前、出来れば新学年新社会人に切り替わる4月頃が望ましい」とのすり合わせをしていました。
オリンピック期間になれば全ての話題がオリンピックに持っていかれるため販売促進的にもマイナスであると考えていました。ところがそんなオリンピックそのものが持っていかれるという誰も予想しえなかったことが起こりました。本は予定通り4月1日に発売されましたが、いかんせん全国の多くの本屋さんが自粛&時短営業に入りました。日本一ビジネス本が売れると言われる東京駅丸善さんの一階レジ近辺に拙著の巨大なポスターが掲示されたり、朝日&神奈川両新聞での記事掲載、文化放送、FMヨコハマ、JFNラジオでの電話生出演(それぞれ10分前後電波独占!)などなど本の宣伝広告としては大変有り難い援護射撃も多々ありました。しかし、その巨大ポスターが掲載されている書店そのものが閉まっていたり、いざ本を買おうと思った人もそもそも本屋さんが閉まっていて買えなかったり、メディアの援護射撃の多くが空砲(笑)に終わるといった現象も起きました。このように不運な要素もあるのですが、いっぽうで自粛生活と読書という行為はとても仲良しであり、Amazonでの売り上げは好調だったのでプラスな面もありました。そして何よりこんな状勢下ですので、先行きの仕事や人生について深く考える人が多く、拙著を読まれる方の中にはより高いモチベーションを持って読んでくださる方が多いと感じました。これを書いているまさに本日、ラジオを聴いたという会津若松市の方から心温まる封書(メールではなく)を頂戴したり、本を読んでご来店された「これまで経理関係の仕事をしていたが最近全く畑違いの介護の仕事に転職した」というお客さまとの会話はとても弾みました。もし今がコロナ禍ではなく年間最繁忙月である4,5月にこの書籍出版がカブりさらに各メディア援護射撃が次々と命中していた場合、店内が無秩序状態の混雑になったりして来店の皆様それぞれに居心地悪い思いをさせてしまっていたかもしれません。
この来客数も売り上げも少なかった期間に血の通った会話のやりとりが出来たり、拙著を購入してくださった方々一人一人にサインする時間がとれたり、「珍しく空いてたから入ってみました」と初めてのお客さんもいらっしゃったりまるで13年前の創業時のような新鮮味も感じております。下へ下へと根を伸ばし、かつポジティブでいること。
今月で満13歳になる珈琲文明はゆるやかに、徐々に、始動開始です。

珈琲文明店主 赤澤 智

「【ライブハウスにエールを!】オフライン、いやLIVEの醍醐味について」

オンライン配信、会議、呑み会etcとにかくオンラインなんちゃらが全国大席巻中です。
当店の第四金曜弾き語りも先々月そして先月と「無観客ライブ配信」をしました。
それはそれでクセになりそうで(笑)面白かったのですが、本当の意味ではやはりこれはライブとはいえないものです。オンラインとオフライン、良い悪いではなく、
とにかく「LIVE」という原点を考えるとオンラインは(特に音楽に関しては)再現不可能と言わざるをえません。オンラインのみならず、例えばヘッドホンで音楽を聴く場合、それは本物の出音とは全く別物になっています。これはコンプレッサーをかけるなどしてダイナミクスレンジを思いっきり狭めた状態で音源化されているからです。もう少し簡単に言いますと、物凄い声量のある歌手が全力で人の耳元で歌ったら鼓膜の損傷にもつながるほどになりますがその歌手の音源化された曲をヘッドホンで聴いてもまぁ大丈夫だったりするのは「本当の範囲を狭めて録音している」からにすぎないのです。よっぽど高性能な録音及び再生機器でなければ音が割れてしまいます。もっと言うとこれはライブ会場にいてもなお実体感は難しいと思います。つまりPAスピーカーを経由して聞こえてくるライブの時点で全てこの理屈(増幅されるから絶対音量は大きいかもしれないが本当の音の範囲を狭めて通ってくる音)なのでやはり本物の出音そのものではありません。
何が言いたいかといいますと、PAも何も通っていない「完全な肉声かつ生演奏そのもの」を体感できるのは、その場で聴ける人たちだけで、ヘッドホンやオンラインでは絶対に体感は出来ない・・・ということです。
大ホールではないライブハウス級のハコでもそれなりにPAは通ってしまってはいますが、本当に声量のあるアーティストなら出音の生声まで聞こえて来たりするのでやはり小さめのハコで体感したいものです。山下達郎さんのライブでは毎回完全肉声で歌うコーナーがあるらしいのでそういうのを一度は見てみたいと私は思っております。
ともあれ、随分と肩身の狭い思いをしている全国のライブハウスで良質なアーティストが全力でライブが出来て、その出音、肉声、生音まで体感できる日が早く来ますように!

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