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2018-07-05

文明通信2018年7月号

文明通信2018年7月号表
文明通信2018年7月号裏

「一方向だけ伸びても円にはならない」

タレントやアーティストの中には何千人の中からコンテストで選ばれた人もいれば、人脈を繋いでいく中で地位を築いた人もいます。一発勝負と複数回勝負、コンテストと現場叩き上げとでもいいましょうか、事の是非ではなく、違いが確かにそこには存在します。
受験では一般受験と推薦があります。私が通った大学には小学校から附属があり、
また様々な高校からの推薦枠もあったためそれらの人たちを合計すると一般受験で入学してきた人よりも多いような印象さえありました。私の友人の中にももちろん附属からそのまま上がって来た人は何人もいました。そしてそれらの人々の家は概ね富裕層(それもかなりの)なのも事実でした。同学年どころか学内に私と同じ高校出身者は皆無で、それは過去にさかのぼっても存在しなかったこともあり、人当りをはじめ、入学当時私は様々なカルチャーショックを受けました。進学方法により人間性を決めてしまうつもりはないのですが、一般受験組、しかも浪人で入学した私にとってはいろんな部分の感覚的差異を多々感ずるも、一言でいうならば、みんな本当に「いい人」でした。少なくとも私が交流してきた附属あがり組の友人たちは皆、ビックリするほどに善良な人が多く、今でも大切な友人として関係が続いております。
さて、これと似た二項対立(?)的発想を「自営業」というものに当てはめてみたいと思います。自らの代で突然起業し、店舗物件を所有しているわけではなく毎月家賃を払いながら営業しているタイプと、代々受け継がれ、歴史も伝統もあるお店で、既に三代目、四代目くらいになっているタイプがあります。前者のタイプはもちろん私自身が共感意識も仲間意識も強くあるのは事実ですが、歴史あるここ六角橋商店街の店舗店主の人々の中には後者のタイプである二代目三代目の店主の方々もとても多く、そして私が思うのはこれらの店主が皆一様に本当に「いい人」なのです。先の大学の友人の話にも似て、なんといいますか、性善説的立場で真っ直ぐに天真爛漫に生きてきたことの結果といいますか、オープンマインドで善良な人ばかりで、良い意味での「余裕オーラ」をまとっていたり、それはこちらとしましてもとても心地が良いものなのです。
どちらのタイプだからどうであるとか型にはめるのはナンセンスであることは繰り返しておきますが、ともあれ私はこのような対極にあるタイプの人々と出会うことで自分自身の中には無かった新たな気づきや自己への戒め等、自分の糧とさせてもらっております。
何事も一方向からだけでは円熟できないということですかね。

珈琲文明 店主 赤澤 智

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