toggle
2018-03-05

文明通信2018年3月号

文明通信2018年3月号表
文明通信2018年3月号裏

「今こそ【紅茶の森】さんを想う」

ちょうど一年前の3月までお隣に「紅茶の森」という紅茶専門店がありました。
珈琲文明より3年先に開業され、去年13年の歴史に幕を閉じた名店です。
紅茶が美味しいのは言うまでもなく、シフォンケーキも絶品でした。
私がどうしてもここ六角橋で店を出したいと思い、店舗物件を探し、ようやく見つけた物件がたまたま紅茶屋さんのすぐ隣でした。
当店よりも先に「紅茶の森」さんは日々堅実に営業されていました。
きっと、隣にあった老舗衣料品店がいきなり喫茶店に変わるとなると心中穏やかではないだろうという思いもあり私は
10年前の珈琲文明内装工事の前に、自身の考えをまとめた資料を持ってご挨拶に行きました。
その資料とは、吉祥寺にある紅茶の店「多奈加亭」とコーヒーの店「武蔵野文庫」が同じビルの中で共存共栄している実証データと写真を持参し、
「六角橋という地域に紅茶とコーヒーという棲み分けのもと、カフェという文化を根付かせ盛り上げていきたい」という私の考えをお話ししました。
おそらくそのようなことをせずとも温厚な店主の森泉さんは最初から温かく迎えてくださったことでしょうが、これは私自身の問題でもあり、かつ「カフェ文化全体として盛り上げていきたい」というのは今でも変わらぬ我が信条でもあるので、たとえばその後「紅茶の森跡地」に出来た隣の「カフェ・アメンドロ」さんの存在も私は大歓迎なのであります。
「紅茶の森」さんは森泉さんの人柄そのままにお店の「QSC(クオリティ、サービス、クレンリネス)」全て完璧でした。
私は森泉さんの寡黙なそのひととなりを知りたい一心で、お向かい六角橋小龍包の高梨さんと二人で何度も「飲み会への誘い」を猛チャージするも常に玉砕(笑)、そう、完全に片思いでした・・・。
そして去年、店を閉めることを知り、閉店期間の常連さんを優先すべく私自身は来店を我慢し、さらに静かに幕をお引きになられたい森泉さんの考えも伝わってきており、なすすべなく隣で見守っているだけだったのですが、どうにもたまらなくなり、完全閉店の確か二日前の営業終了後に紅茶の森の扉をノックしました。
伝えたいことは「ずっとリスペクトしています」ということ一点だけでした。

「約13年間、格別の御愛顧を頂き、心より感謝申し上げます。できましたら、今後も、自宅やお店で、紅茶をご愛飲して頂けたら、とても嬉しく思います。
今まで、本当にありがとうございました。紅茶の森 店主」

という紅茶への真っ直ぐで純粋な愛情が読み取れる貼り紙を見て胸がいっぱいになりましたが、閉店後すぐに今回のこのような一連の話をここに書くのも何か違うような気がして、
一年たった今こそ触れてみることにしました。敬意をこめて、本当にお疲れ様でした。

珈琲文明 店主 赤澤 智

関連記事