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2016-06-05

文明通信2016年6月号

文明通信2016年6月号表
文明通信2016年6月号裏

「遠くに住む友人・知人」

私が横浜市民になってから今月6月でちょうど10年になります。
自分にとっては縁もゆかりもなかった地。ただ「横浜でお店をやりたい」と思っただけで、
はやる気持ちを抑えきれずに、まだ物件も決まっていないのに10年前の2006年6月に六角橋に引っ越してきました(しかも当時の居住所は6丁目!本当に6ばっかりです)。
生まれも育ちも横浜とは無縁だったため、必然的に親類、友人、知人はほぼいない中、それでも開業後は多くの友人知人がいろんなところからわざわざ来てくれました。
私は幼少の頃から父の仕事の関係で転校が多く、それゆえ友人は実に様々なところにいて、
例えば中学の二年半は関西(兵庫県西宮市)、残りの半年は杉並区阿佐ヶ谷の中学でした。
店舗が神戸や阿佐ヶ谷(または高円寺)であればまだしも、ここ横浜にある珈琲文明に来店してくれたその二つの中学時代の同級生の数は私の想像をはるかに超えていました。
関西の時の友人が何人もわざわざ来てくれるのはここまでの距離を思うだけでも驚異的なのは確かですが、その次のたった半年しか在籍しなかった杉並区の中学時代の友人らがこれまた何人も来てくれていることも同じくらいに驚異的なことだと思っております。
さらにもっと驚くべきことが、それらの友人たちの多くが最初の一回だけではなく、
複数回来店してくれているということです。
先日は前職の山梨での学習塾で教室長をしていた私のもとで働いてくれていた当時の塾講師が来てくれました。現在山梨の郵便局員で全国表彰されるほど優秀で立派な社会人となった彼女は「なかなか来られなくてすみません」と言っていましたが、義理で1回来てくれるだけでも十分嬉しいのにはるばる山梨から通算で3回も来てくれていることは感無量であり、そもそも会社の同僚でもない、雇用関係にあった当時の学生アルバイトの講師がわざわざ来てくれることや、その昔今度は私がアルバイトで講師をしていた時の生徒が大人になって来てくれていること(しかもやはり複数回)は全て有難い、そう、文字通り「有り難い(=あたりまえではない)」ことと思っております。
そしてもともと縁もゆかりもなかったここ横浜の地が、
まもなく自分にとって最も長く住む街となるのは確実で、
この10年の間にゼロから始まり出来た多くの友人知人は私にとってかけがえのない財産であります。これからもよろしくお願いします。

赤澤珈琲研究所 代表 赤澤 智

今月の逸品(一品)
「ブラジル」

先日、お客様から「ブラジルってどういう味のコーヒーですか?」と訊かれました。
とてつもなく壮大な質問でありながら、それでいてとっても新鮮なご質問でした。
私からはまず「This is coffee!っていう味です」というこれまたなんとも大雑把過ぎる回答をしました(笑)。そしてもう少しだけ細かく補足説明もしましたのでここでもしておきます。
まず、ブラジルのコーヒーというものは全世界の約3割を占めているものでして、
さらにブレンドのベースとなる場合も多いことも踏まえると、これまでにコーヒーを飲んだことがある人でブラジルのコーヒーを一滴も口にしたことがない人はほとんどいないのではないでしょうか。
ブレンドのベースとなりやすいという理由には生産量が多いからというだけではなく、
「味を調えやすい丸い風味」という特徴が挙げられます。あ、この表現も大雑把なのでもう少し具体的に述べますと、例えばアフリカや中米などの有名産地は標高が高く、それゆえ綺麗な酸味を有し、そこが高く評価され、昨今のコーヒー界での美味しさの常套句「フルーティーな」という形容がしばしば飛び交い、その一方で「酸味が苦手」という人も未だに多数いるのも事実です。
ブラジルはこれらの産地に比べると標高は高くない場所が多いため、そこまで強い酸味は感じられない場合が多いかと思います。
ここで申し上げたいことは、それが良いとか悪いではなく、
やはりブラジルのコーヒーは多くの人々にとってのコーヒーの「デフォルト」、「イデア」となっているということです。ブラジルが基準となっているからこそ、それとは異なる風味特性を持つ豆を「フルーティー」や「酸味が強い」などの形容も生まれると思うのです。

今季の当店のブラジルは「イルマス・ペレイラ農園」のもので、
ブラジルの伝統的なナチュラルプロセス(天日乾燥)では珍しく「アフリカンベッド」での乾燥処理をしております。これにより下から風も入り均一な乾燥となりやすく、また乾燥中の豆が高温になり過ぎないと言われています。
一般的な天日干しに比べ攪拌等の人的作業で手間暇かけて丁寧に精製された、
This is coffee! なブラジルをぜひご賞味ください。

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