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2015-04-05

文明通信2015年4月号

文明通信2015年4月号表
文明通信2015年4月号裏

「【そこに行くとある店】への憧れと使命感」

新年度の切りかえ時期。大学生、社会人、当店の馴染みのお客様の中にもこの春卒業や引越し、転勤のかたは多く、毎年のことではありますが、やはりいつも独特な思いが去来します。先日、お客様が帰られたあとテーブルを片付けようとするとそこにこのような手紙が残されていました。

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私はお客さまのお顔をなかなか覚えられない性分で、それは来店されたお客さまへは「なるべく話しかけない、凝視しない(笑)、放っておく(!?)」を基本スタンスにしているからという言い訳を抜きにしてもあまりにもひどい自覚があるのですが、この学生さんのことはハッキリと覚えています。オーダーと会計以外の言葉をかわしたことが一度もありませんが、それでも仮にあと10年後に突然また来店されても覚えている自信があるほどです。当店は、いわゆる「常連さん」というお客さまで、まだ名前も知らず、まともに会話したことがないお客さまというのがおそらく他店に比べても物凄く多いほうだと思います。それでもやはりこれらの方々は紛れもなく「常連さん」でして、言葉をかけることもかけられることもなくとも、少なくとも私の方からは「大好き光線」を出しています。この学生さんにも私はいつも大好き光線を出しておりまして、そんな彼からの手紙は本当に嬉しく、お店をやってよかったという感情のある種MAX、「冥利に尽きる」とはまさにこのことでした。かつては「学生街の喫茶店」という歌も流行ったほど大学のそばには喫茶店(敢えて「カフェ」とは呼びません)があったものです。今でも神田や御茶ノ水近辺には「さぼうる」 や「伯剌西爾(ぶらじる)」といった老舗は存在します。しかし、やはり圧倒的に少数になってしまいました。学生だったお客様が社会人となり、家庭を築き、何十年もたった後にもなお「そこに行くとある店」の存在はきっとホッとすることでしょう。私にとっても池袋のあそこやあそこ等、頭に浮かぶお店がありますが、そういうお店にはいつまでも「そこに行くとある店」であってほしいと思います。珈琲文明はまだほんの8年弱ではありますが、やがては多くの神大OB.OGの皆様にとっての「そこに行くとある店」として、続かせていきたい、いかねばならない、ともはやこの頂いた手紙を読んでからは憧れから使命感を持つまでに変わりました。

珈琲文明店主 赤澤 智

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